TOBA-BLOG

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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」188

2017年03月10日 | 物語「水辺ノ夢」

一羽の鳥がいる。

・・・あれ?

圭は首を傾げる。

あの鳥は・・・。

圭はその鳥に近付く。

周りには何もない。
木も草も、地面も、空も。
不思議なほどに灰色の世界。

けれども、圭は構わず進む。

「・・・・・・!!」

圭はその鳥を見て、息をのむ。

「お前、まさか」

真都葉が友だちと呼んでいた鳥。

圭が殺した・・・鳥。

鳥はただ、圭を見つめる。

圭は恐る恐る近付き、鳥を見る。
どこも怪我はしていない。

「・・・よかった」

安心感。
これで、真都葉に、・・・。

いや

これで、よいのか?
真都葉が喜ぶから?
もし、本当にこの鳥が、

「それ、」

突然、圭の後方から、声。

「俺の鳥なんだ」
「――っ!!」

振り返った圭は、思わず後ずさりをする。

「お前はっ」

圭は動悸を感じる。

そこにいたのは、

「俺が東で大切にしていた、鳥」

東一族の男性。

知っている。
この東一族が誰なのか、圭は知っている。

「・・・光」

杏子が東一族の村で暮らしていたときの、恋人。

圭は動悸を押えようとする。

いつの間にか、鳥は光の腕に止まっている。

「生きものを、安易に殺さないでくれないか」

光が口を開く。

「生きものの声が聞こえる者からすれば、悲惨でならない」
「光・・・」

圭はハッとする。

周りの景色が、どろどろと溶け出す。

あの鳥も。

光も。

「お前はそうやって」

いつか

「この鳥と同じように、東一族である杏子も殺すんだろう」

・・・殺す、んだろう。

圭は慌てて、手を伸ばす。

「待ってくれ!」

そんなはずはない!!

叫ぼうとしても、圭は声を出せない。

殺す?
俺が、・・・杏子を?

「光、待ってくれ!!」

伸ばした圭の腕も、どろどろと溶け出す。



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