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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」195

2017年04月04日 | 物語「水辺ノ夢」


「杏子はこういうのは
 嫌いかもしれないけれど」

圭は杏子の手を取り、
刀の持ち方を教える。

「持ち方は、こう」
「こ、う?」
「違う、利き手をこちらに
 逆の手でそれを支えて」

「難しい、のね」

「しっかり握って。
 手を離してしまわないように」

もう、どうにかならないのか。
そう思いながらも
圭は事の段取りを整えている。

着実に。

「使い方を覚えておいて、
 ……必要になる時が来るから」

その言葉に杏子は圭を見る。

「……」

そして、そう、とだけ頷く。
圭は思わず目を背ける。

「……杏子は」

言葉がこぼれる。

「聞かないのか」
「圭?」
「なんで、こんな事、て」

「必要なのでしょう」

「あぁ」
「圭がそう言うのなら」

だから、疑わないのか、と
圭は首を振る。

「……っ」

杏子は刀を置き、圭の手を取る。

「私からも、
 1つ良いかしら」

言う。

「真都葉の好きな豆ご飯」

「……?」
「実は少しだけ出汁を入れているの」
「だし」
「西の料理でよくハーブを使うでしょう。
 それに近いわ。
 東一族の料理でよく使うのよ。
 覚えておいて」

圭は目を見張る。
杏子は、気付いている?

「圭も真都葉に作ってあげてね」

今の言葉は、まるで。

「………」

圭は言葉が出てこない。

「あ」

杏子が口元に手を当てる。

「東一族の話は
 しない方が良かったわね」

いや、と圭は首を振る。

「話して」

なんでもいい。
聞いておきたいと圭は言う。
いつも圭が居ないとき
家で何をして過ごしているのか、
そんな事でもいい。

「東一族の事や、
 杏子が東一族でどうして過ごしていたとか」

そんな話を今までしたことが無かった。

「それじゃあ、圭の話も聞きたいわ」

杏子が圭の手を握る。



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