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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」192

2017年03月24日 | 物語「水辺ノ夢」

「お帰りなさい」

戻って来た圭と真都葉を、杏子が迎える。

「かあー!」

真都葉はニコニコとして、圭から身を乗り出す。
杏子は、真都葉を抱きかかえる。

「病院はどうだった?」
「せんせーにいろがみあげたのー」
「そう」
「せんせーよろこんでたのー」
「よかったわね」
杏子が笑う。
「先生は、痛い痛いはしたの?」
「してないよー」
「あら、診察はしてないのかしら」
「してないのかしら」

真都葉は杏子の言葉を繰り返し、下へと降りる。

持って帰ってきた色紙を、自分の箱の中に片付ける。
また、別の小道具を取り出す。

杏子は圭に向く。

「圭。高子は何と?」
「ああ、真都葉の怪我は心配ないみたいだ」
「よかったわ」

杏子は、真都葉の寝る支度をする。

「かあ、ごほんよんでー」
「そうね。どのご本にしましょうか」
「まつばこれね」

真都葉は本棚から、いくつか本を取り出す。
圭は、灯りを小さくする。

「さあ、真都葉、隣の部屋に行きましょうね」
「とう、やすみなさい」
「おやすみ、真都葉」

真都葉は手を振る。
圭は居間の椅子に坐ったまま、手を振り返す。

杏子と真都葉は、隣の部屋に行く。

杏子は、真都葉に布団を着せる。

「じゃあ、このご本からね」
「うん」

「昔々、水辺の真ん中には、・・・」

真都葉は本を読んでもらうのが好きだ。
寝る前は、必ず3冊は本を読んでもらう。

「水辺と山には大きな獣がいて、」
「けものこわいねー」
「そう?」
「まつば、みずべもやまもこわいよ」
「人と動物は仲良くなれるのよ」
「なれる?」
「お母さんが昔いたところは、人と動物が仲良しだったのよ」
「ふーん」

「さあ、これでおしまい」

「もいっこ、もってくればよかったー」
「また明日にしましょうね」
「はーい」

真都葉は、杏子を見る。

「かあ」
「なあに?」
「すてるのどうする?」
「え?」
「とうとせんせーが、おはなししてたの」
「真都葉?」
「すてるの、かなしいね・・・」
「真都葉・・・」
「みずべにも、やまにも、かいじゅーいるね」

「・・・・・・」

真都葉は、眠っている。

杏子は、真都葉を見る。
頭をなでる。



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