TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」39

2015年06月12日 | 物語「夢幻章伝」

「何か、外が騒がしいと思ったら!!」

店の中に仁王立ちしていた理容師は、きりっと云う。

「他一族がいたからか!!」

「とにかく!」
「この頭を!!」
「どうにかして!!!」

「お、ヘビか」

理容師はきりっと、へび呼ロイドを見る。
「お前、どんな毒を持ってるんだ!?」

「もう毒とか、聞き飽きたわー!!」

マツバさん、思わず、理容師にストレート。

「う、ぐふっ!!」

理容師はよろけつつ、

「ふ、・・・やるな」

決め顔!!

「早く、この頭を何とかしてほしいのよ!」
「その頭は・・・」

理容師の顔が真剣になる。



アヅチとマツバ(と、へび呼ロイドも?)は
爆発後に、よくあるぼーーんの、アフロ髪型です。

「夢を、・・・見たんだ」

理容師は、持っていたシャンプーを置く。

「昨夜、砂一族特製のパンを食べた少年と」

アヅチ?

「特選野菜料理を食べた少女と」

マツバ??

「のぞき窓に挟まった風船とヘビのようなものが」

・・・・・・。

「頭ボーンで、この店の扉を開けて入ってくる夢を!!」

・・・・・・
・・・・・・。

あー~

そうですか。

「おっさん、早くしろよ!!」

アヅチとマツバは、勝手に椅子に坐る。
おっさんの話とかどうでもよい。

「こんなんじゃ、外を出歩けないわ!」

「そうかそうか」

理容師は、うんうんと頷く。

「とにかく、坐りなさい」
「もう坐ってるわよ!!」
「メニューはいかがなさるかな、お客様」
「元に戻してぇ~」
「ふふふ。君は、バリカンで剃ってあげよう」
「おぎゃー!!」
「安くすんでいいわね!!」

「ところで、他一族のお客様」

きりっと、理容師がハサミを持つ。

「お支払いはいかがなさいますかな!」

「お、」
「お代?」

この世は、何かを得るために、代価を支払わなければならない。

アヅチとマツバは、へび呼ロイドを見る。



「当店、カードのお取り扱いはしておりません!!」

「な、」
「なんですって!」

「では、はじめましょう」

「はじめるなー!!」

くっ、と、アヅチは鏡越しに理容師を見る。

このままでは、
食い逃げならぬ、切り逃げ(?)で、また牢に入れられてしまう!

「ちょっと待って!」

マツバが声を上げる。

「いったい、どの部位がお望み!?」
「ぅおおおおをを!? マツバさんっ!?」

・・・砂一族は、人を食べるって(以下略)

「ふふふ。」
理容師は、ハサミを動かしながら云う。
「そんな難しいものではない」

理容師は、ちらちらと、へび呼ロイドを見る。

「う・・・、やな予感が」

へび呼ロイドは寒気を感じた!

アヅチとマツバは、顔を見合わせる。
そんな難しいものではない、と云う、理容師の言葉を信じるしかない。

次回!

「夢幻章伝」初のヘアースタイルチェンジか!!?

乞うご期待!





「大変だ!!」

カットの途中ですが

大慌てで、他の砂一族が入ってくる。

「大変だって!」

その言葉に、理容師はハサミを動かしながら、息を吐く。
「まったく、今日は騒がしいな!!」
「当たり前だ!」
「いったい何だ?」

「なんでも、ねまってる料理が降ってきたらしい!」

「なんだって!」

理容師は、思わずよそ見!

(よい子はマネしない!)

「ねまってる、」
「料理!!」
「大切な水を使って作った料理を、いったい誰だ!!」
「まったくだ!!」
「ふざけたおせ!!」
「犯人は、新薬(どちらかと云うと毒)の、治験刑だな!!」
「まったくだ!!」

アヅチとマツバは、おとなしく、そして、顔を見合わせる(2回目)。

早いとこ情報を集めて、ここを出ようと強く誓ったのであった。



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「夢幻章伝」38

2015年06月09日 | 物語「夢幻章伝」

牢から出たアヅチ達は
砂一族の村を一直線に進む。

村人達から勧められる郷土料理の試食を振り切りつつ
ひたすら、まっすぐ。

「なぜなら料理の試食も」
「怪しい香りがしたからな!!」

砂一族怖い。

「くっ!!
 きっとここにも地元特産の
 美味しい料理があるはずなのに!!」

マツバは拳を握りしめる。

「こんなのばっかり!!」

はっ、と
アヅチは思う。

捕らえられた初日。
アヅチはパンとミルクを支給されたのだった。

「唯一のノーマルな食事って
 あれぐらい
 ん……待てよ、そもそもあれも、もしや」

「どうしたのよアヅチ」

すたすたと進むマツバに
アヅチはいいや、何でも無いぜ、と
きりっと返す。

深く考えるのを止めたらしい。

「2人ともお腹が空いているんだね!!」

待ってました、とばかりに
へび呼ロイドが言う。

居たのか。
自力で抜け出せたのか、牢の窓。

「そうだな、出来ればお前らが食べたって言う。
 東一族のお宿の料理とか食いたいな」

アヅチはちょっと空腹で
イライラしている。

さっきの実験カレーは
物が物だったので
何だか食べた気がしない、らしい。

「その件にかんしては、
 おいら達だって、アヅチには悪いと思ってるんだ。
 でも、食事をとらないわけにはいかないし」
「……そりゃそうだろうけど」
「アヅチだってお宿の料理食べたかった、よね」

「ああ」

なんだか大人げなかったな、と
アヅチは怒りを収める。
次回東の村に行ったときに楽しめたらそれで

「だから、おいら
 ルームサービスを包んで持ってきて」

「おわああああああああああ!!!!」
「いやああああああああああ!!!!」

ふと、懐の四次元な空間から
へび呼ロイドが取り出した、
袋に包まれた、何か、を

「こっち持ってくんな!!!」
「ねまってるー!!」

「なに、なに
 ねまってるってなに~」

無邪気にへび呼ロイドがその物体を
持っているが、
アヅチはそれを

掴んで、
助走を付けて、
円盤投げのようにグルグルと回り。

「でやああああああ!!」

遙か遠くに投げた。

思い出して欲しい、
マツバ達が東で料理を食べたのはいつか。
そして、延々と砂漠を歩き続けた事と、
その間、へび呼ロイドの懐で
温められていた料理を。

「つまり、ねまるってそういう事よ!!」

方言です。マツバの解説でした。

飛んでいった料理はスタッフが以下略。

「あぁあ、無駄に動いてお腹空くじゃない。
 でも、ここの料理はなんだかな、だし」
「早く用事を済ませて
 次の村に向かうしかない、のか」

2人の言葉に
へび呼ロイドは眼を輝かせる。

「じゃあ2人とも、
 おいら達の同僚を捜してくれていたんだね」

こんなに、一生懸命になって。

「まて、へび呼ロイド
 お前の言い分は分かっている!!」
「だけど、待って
 それより先に済ませないといけない事があるの」

ざっ!!

「え?え?」

アヅチとマツバはとある店舗の前に立つ。
2人はひたすらここを目指して進んでいたのだ。

「よろしく!!」
「お願いします!!」

どーん、と
2人は勢いよく、店のドアを開ける。

「この頭!!」
「どうにかして!!」
「「理容師さーん!!!」」

みんなの頭はぼーん、のままだった。



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「夢幻章伝」37

2015年06月05日 | 物語「夢幻章伝」

「・・・何、まじ泣きしてんのよ」

マツバは、ドン引きだ(笑)

「アヅチ、なかなか泣かないでぇええ!!」

へび呼ロイドは、もらい泣き。

「男が泣くなんて、うけるぅ!!」
「ばかやろ! 涙は男女共通だ!!」

アヅチの涙声にも、シマは爆笑する。

「本当に、もう。海一族の村では魔法も針も使えず、」
・・・・アヅチ、回想2周目。
「東一族の村では、旬の野菜なんちゃらを食べ逃すし、」
「あれは、おいしかったわよ!」
「おぉおおおいい、まだ云うか!」

ほろり。

「それに、アマキとタツキにまじって、活躍を、」
「おっ、ちょっと待って!」

フワは手を上げる。

「そういや、あなたたち、アマキに連れられてきたわよね」
「そうだけど」

マツバは首を傾げる。

「あなたたち、東一族の村では、アマキと一緒に行動してたってこと?」
なぬっ、と、シマも続く。
「何々ぃ? アマキくんは普段、何をやってるの?」

話題が変わった横で、アヅチはまだ、ほろりしている。

「お前ら、俺の話を!」
「「もういいわ!」」
「なっ!!」

アヅチは、・・・涙が止まらない。
けして、薬の効果ではないと云うのに!!

もはや、
フワとシマは、アヅチをアウト・オブ・眼中。
マツバに質問を浴びせる。

「アマキは、どんな魔法を使ってた?」
「家族構成はどうなっているのぉ??」
「いつ、砂漠当番が回ってくるの???」
「好きなものは何ぃ????」
「てか、本名は何だって?????」
「苦手なものは何ぃ??????」
「身体に入ってる刺青みたいなのは何よ?×7」
「役職は何なのぉ?×8」

ははーん

マツバは、何かがつながったように、ピンとくる。

フワとシマ

これだけ、込み入った質問をするとは

もしや

「あんたら、アマキのファンなのね!!?」

・・・・・・違います。

フワとシマは爆笑だ。

「あはは! そうそう! ファンなのよ」
「アマキくんとはお互いねぇ!!」

「アマキとは、行動してたってほどでもないけど」

どーーーん、と、マツバは云う。

「一緒に、飛び出せ小僧を探したぐらいよ!!」

「・・・飛び出せ?」
「小僧・・・??」

えー~~~
何それ~~~~

フワとシマは、さらに爆笑する。

「それって、東一族の、最重要機密なのかしら~」
「さあ? でも、秘密でもない、とも云ってたかしら」
「うけるぅ!!」
「こっちは、その飛び出せに相当踊らされたわよ!!」

うんうん、と、フワはニコニコする。

「あの子は、嘘が上手いからね♪」

フワは、がしっと、檻越しにマツバの手を掴む。

「ねぇ! また東に行ったら」
「さっきの私らの質問、アマキくんに訊いといてねぇ!」
シマが、フワに続く。

「あんたら・・・」

「アマキのファンの気持ち」
「判ってくれるぅ!?」

マツバは、息を吐く。

「判ったわ!!」

マツバさん、利用されています!

「それじゃあ」

フワとシマは、顔を見合わせて頷く。

「これ以上、情報もないみたいだし」
「あの、ふわふわしたのも、いなくなっているし」

「同僚ぉおおお!!」

勝手に脱出。

「この流れは、つまり!!」

まだ、涙していたアヅチが立ち上がり、マツバを見る。

「ええ」

マツバも、アヅチを見て、頷く。

「食べられずに、すみそうね!!」
「食べ!? え、ちょっ、お前それ何の話!?」

慌てふためくアヅチをよそに、マツバは続ける。

「さあ、私を解放しなさい!!」

「判ったわよ~♪」

マツバのセリフが、若干足りないような気もするが、
フワの合図で、シマは鍵を取り出す。

「さ。好きなだけ、観光して行ってね!」
「でも、さっきの質問は忘れないでねぇ!!」

牢の扉が開かれる。

「「久しぶりの外ー!!」」

アヅチとマツバは、よくある旅立ちのポーズをする!

(そういえば、まだ、頭ボーンのままですが)

「ウェルカム、砂一族♪」



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「夢幻章伝」36

2015年06月02日 | 物語「夢幻章伝」


「娘のピンチ!!」

その時、遙か遠くの地で
洗濯物をたたんでいたマツバの母は
娘の異変を感じ取った様な、そうでない様な。

え、
あ、
う、

「その……マツバ……さん?」

戸惑いのアヅチが声をかけるも
マツバの涙は止まらない。

「か、かわいそう」

ボロボロ。

「お嫁さん
 かわいそう~ぅううう」

「お、おいおい、
 泣くなよ、作り話だろ
 ―――ってもしや、これが毒の影響」

「そうよ。
 まだ、実験中だから
 詳しく何の毒、とは言わないけれどね」
「2冊目に突入する、フワ?」

砂一族の2人は更に絵本をチョイスしている。

「お婿さんがもっと
 きちんとしてくれていたらぁあああ」

マツバの嘆きは止まらない。

「あー、分かった分かった。
 全部婿のせいだな!!」
「でも、お婿さんも
 せっかく謝りに行ったのにぃい」

ボロボロボロ。

「めんっどくせぇな、おいいい!!!」

こんな滅多に見ないマツバの姿に
アヅチはどうして良いのやら。

「はっ!!こんな時こそ!!」

じゃ~ん。
アヅチはポケットから
ハンカチ&ティッシュを取り出す。

「兄貴がいつも持って行けと押しつけるこれが
 初めて役に立つぜ!!」

アヅチ兄モモヤのオカン力。

「ほら、使えよ!!」

と、アヅチはほんの少し照れながらも
そっとハンカチを差し出す。

「……アヅチ」


「ウチの娘に
 よからぬ輩が!!!」

その時遙か遠くの地で、干し肉を作っていたマツバの父も
娘の危機を感じ取った様な、そうでない様な。


が。

「いらないわよ、
 あんたそれ、
 トイレで手を拭くのに使ってたじゃない!!」

どーーん。

「なんだか、もう全然
 哀しくも何ともないわ!!!」

マツバ、復活!!!

「うそ!!」
「薬の効き目が切れるの早っ!!」

「早って言うか、一瞬の出来事だったな」

フワとシマに、アヅチも乗っかって
ツッコミを入れる。

「何というか
 薬が効き過ぎる東一族と
 まったく効かない西一族を」
「足して2で割った様な感じね。
 さすが二つの一族の間の南一族!!」

ほうほう、と
フワとシマは興味ありげにマツバを見る。

「……そうかぁ?
 土地的に間っちゃ間だけど
 別にハーフとかじゃないし」

だが、とにもかくにも
この状況はまずい。とアヅチは思う。
このままじゃ、容疑は一向に晴れそうにないし、
へび呼ロイドは相変わらず挟まっているし、
砂一族の言われるがままにしていたら
更にありとあらゆる薬の実験台にされかねない。

とにかく、外に出られたらなんとか。

(以下、小声)
「こうなりゃ」
「何よ、アヅチ」
「いいからマツバ、
 今から俺の話に合わせろよ」
「……分かったわ???」

ぐっとアヅチが前に出る。

「あら?」「どうしたの、もうひとりの南一族?」

「俺、何というか、
いつもこう、だよな」

アヅチの作戦はこうだ。
おそらくこの薬と言うか毒は
『何だか異様に涙もろくなるもの』に違いない。

そこで

「南一族では、なんだか
 あの陽気な雰囲気になじめなくてさ」

アヅチは薬が効いてきたという
ふりをすることにした。

「旅に出たは良いものの
 海一族では活躍どころを逃すし、
 ギャグは滑るし」

しかし、砂一族の2人は簡単にはごまかせないだろうから
とりあえず
今まであった哀しいことを色々思い出してみる事に。

「東一族の村では
 俺の行動は
 全てからぶること山のごとしだし」

思い出しつつ、
とりあえず言葉を並べるだけのつもりが

「っていうか、
 今、こんな状況になって居るのも
 全部俺のせいっつうか」

ほろり。

「あ、あれ、なんだろこれ。
 ははっだっせぇよな」

色々こみ上げてくるものとかあったらしい。


「アヅチ泣かないでーーーー!!」


へび呼ロイド、
今回唯一の台詞。



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