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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」43

2015年06月26日 | 物語「夢幻章伝」

「はっ! 待ちなさいよー!」

マツバは我に返り、谷の女の子を追おうとする。



その姿は、すでにない。

「自分で声掛けといて、放置プレイとは何様よ!」

マツバはいろいろ容赦ない。

「ま、いいだろ」
アヅチが云う。
「とのにいさま、と云う、キーワードを手に入れたし!」
「・・・確かに、エラそうな人の名まえよね」

どこかの世界で、「殿」とは国のトップだったような。

「とにかく、進もうぜ」
「しょうがないわね!」

アヅチとマツバ(と同僚)は、谷一族の村を歩き出す。

「まずは、宿探しね」
「今日こそは、布団に!」

ライトアップで、谷の中の明るさが半端ないが、
もう、夜なのである。

そう

夢幻章伝の旅、2泊目!

「早いな!」
「早いわね!!」

実際は、村間の距離は、もっとあるはずなので
徒歩何分では、たどり着かないはず・・・。
ヘタしたら、村間の移動は1日単位じゃないだろうか。

南一族
海一族
東一族
砂一族

そして、谷一族。

こんなに渡り歩いても、旅は、まだ3日目!

でも

「夢幻だし!」
「ギャグだし!!」

ま、いっか。

「洞窟をくりぬいた家の中って、どうなってるのかしら」
マツバは、真顔で云う。
「楽しみね!」
「ぴぎゃぴぎゃっ!」
「俺、針を研ぎに出そうかな」
アヅチも、真顔で云う。
「ちょっと欠けてきたぜ!」
「それ、いつ使ったのよ」
「ぴぎゃぴぎゃっ!」
「くっ!」

痛いところを突かれて、アヅチはよろめく。

と、そこに

――どんっ!!

「わっ!?」

何かにぶつかられて、アヅチはさらによろける。

「っ!!?」
「痛ぁああああ!!」

声ばかりでかく、誰か、少年が倒れている。

「あら。大丈夫?」

マツバは、アヅチを見て、その少年を見る。

「拙者にぶつかるとは!」

そう云って、少年は、ぎろりと、ふたりを見る。
そして、走り去る。

「なんだなんだ??」
「何よ、今の??」

何かしら、フラグが立ったのか。
どこかの一族で、似た展開があったような気もするよ。

「飛び出してきたの、あっちだろ!」
「とのにいさま!」
「あんた、また飛び出されたのね」
「とのにいさま!!」
「ちっくしょう、とのにい、」
「・・・ん?」
「とのにいさま!!!」
「・・・との」
「にいさま・・・」

ふたりは、前を見る。

「この人たち、ほら! 外の人たちだよ!」

そこに、先ほどの女の子と

「へえ!」

いたって普通の、・・・人。

「とのにいさま、お客さんなのかしら!?」
「うん。東の人たちだね」
「違うわよ!」

間髪入れず、マツバは否定する。

「私は南一族よ!」
「俺もな!!」

「あ、・・・南一族か」

その、とのにいさま、とやらは云う。

「そうか。南と云うと、すいぶん遠いから」
思い浮かばなかった、と、とのにいさまは笑う。
「いやー、実にめずらしい」

アヅチは、首を傾げる。

「お前・・・、とのにいさま?」
「そうです!」

見た目はいたって、普通の、人。

だが、

これは、ひょっとして

「とのにいさま、って云うことは」
マツバは、ちらりと、とのにいさまを見る。
「つまり、殿。ここのエライ人ってことでしょ?」

谷一族のキーパーソン!?

「違うよ」

ははは、と、とのにいさま。

「だったら、いいなって」

あはははははははは。

「ほら、自分。ひょっとしてどこか殿様の生まれ変わりかも」

あははははあははは。

「・・・・」
「・・・・」
「マツバ・・・」
「・・・ええ、アヅチ」

ふたりは、もう一度、とのにいさまを上から下まで見る。

うん。

これって

痛い人だ。



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