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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」36

2015年06月02日 | 物語「夢幻章伝」


「娘のピンチ!!」

その時、遙か遠くの地で
洗濯物をたたんでいたマツバの母は
娘の異変を感じ取った様な、そうでない様な。

え、
あ、
う、

「その……マツバ……さん?」

戸惑いのアヅチが声をかけるも
マツバの涙は止まらない。

「か、かわいそう」

ボロボロ。

「お嫁さん
 かわいそう~ぅううう」

「お、おいおい、
 泣くなよ、作り話だろ
 ―――ってもしや、これが毒の影響」

「そうよ。
 まだ、実験中だから
 詳しく何の毒、とは言わないけれどね」
「2冊目に突入する、フワ?」

砂一族の2人は更に絵本をチョイスしている。

「お婿さんがもっと
 きちんとしてくれていたらぁあああ」

マツバの嘆きは止まらない。

「あー、分かった分かった。
 全部婿のせいだな!!」
「でも、お婿さんも
 せっかく謝りに行ったのにぃい」

ボロボロボロ。

「めんっどくせぇな、おいいい!!!」

こんな滅多に見ないマツバの姿に
アヅチはどうして良いのやら。

「はっ!!こんな時こそ!!」

じゃ~ん。
アヅチはポケットから
ハンカチ&ティッシュを取り出す。

「兄貴がいつも持って行けと押しつけるこれが
 初めて役に立つぜ!!」

アヅチ兄モモヤのオカン力。

「ほら、使えよ!!」

と、アヅチはほんの少し照れながらも
そっとハンカチを差し出す。

「……アヅチ」


「ウチの娘に
 よからぬ輩が!!!」

その時遙か遠くの地で、干し肉を作っていたマツバの父も
娘の危機を感じ取った様な、そうでない様な。


が。

「いらないわよ、
 あんたそれ、
 トイレで手を拭くのに使ってたじゃない!!」

どーーん。

「なんだか、もう全然
 哀しくも何ともないわ!!!」

マツバ、復活!!!

「うそ!!」
「薬の効き目が切れるの早っ!!」

「早って言うか、一瞬の出来事だったな」

フワとシマに、アヅチも乗っかって
ツッコミを入れる。

「何というか
 薬が効き過ぎる東一族と
 まったく効かない西一族を」
「足して2で割った様な感じね。
 さすが二つの一族の間の南一族!!」

ほうほう、と
フワとシマは興味ありげにマツバを見る。

「……そうかぁ?
 土地的に間っちゃ間だけど
 別にハーフとかじゃないし」

だが、とにもかくにも
この状況はまずい。とアヅチは思う。
このままじゃ、容疑は一向に晴れそうにないし、
へび呼ロイドは相変わらず挟まっているし、
砂一族の言われるがままにしていたら
更にありとあらゆる薬の実験台にされかねない。

とにかく、外に出られたらなんとか。

(以下、小声)
「こうなりゃ」
「何よ、アヅチ」
「いいからマツバ、
 今から俺の話に合わせろよ」
「……分かったわ???」

ぐっとアヅチが前に出る。

「あら?」「どうしたの、もうひとりの南一族?」

「俺、何というか、
いつもこう、だよな」

アヅチの作戦はこうだ。
おそらくこの薬と言うか毒は
『何だか異様に涙もろくなるもの』に違いない。

そこで

「南一族では、なんだか
 あの陽気な雰囲気になじめなくてさ」

アヅチは薬が効いてきたという
ふりをすることにした。

「旅に出たは良いものの
 海一族では活躍どころを逃すし、
 ギャグは滑るし」

しかし、砂一族の2人は簡単にはごまかせないだろうから
とりあえず
今まであった哀しいことを色々思い出してみる事に。

「東一族の村では
 俺の行動は
 全てからぶること山のごとしだし」

思い出しつつ、
とりあえず言葉を並べるだけのつもりが

「っていうか、
 今、こんな状況になって居るのも
 全部俺のせいっつうか」

ほろり。

「あ、あれ、なんだろこれ。
 ははっだっせぇよな」

色々こみ上げてくるものとかあったらしい。


「アヅチ泣かないでーーーー!!」


へび呼ロイド、
今回唯一の台詞。



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