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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」38

2015年06月09日 | 物語「夢幻章伝」

牢から出たアヅチ達は
砂一族の村を一直線に進む。

村人達から勧められる郷土料理の試食を振り切りつつ
ひたすら、まっすぐ。

「なぜなら料理の試食も」
「怪しい香りがしたからな!!」

砂一族怖い。

「くっ!!
 きっとここにも地元特産の
 美味しい料理があるはずなのに!!」

マツバは拳を握りしめる。

「こんなのばっかり!!」

はっ、と
アヅチは思う。

捕らえられた初日。
アヅチはパンとミルクを支給されたのだった。

「唯一のノーマルな食事って
 あれぐらい
 ん……待てよ、そもそもあれも、もしや」

「どうしたのよアヅチ」

すたすたと進むマツバに
アヅチはいいや、何でも無いぜ、と
きりっと返す。

深く考えるのを止めたらしい。

「2人ともお腹が空いているんだね!!」

待ってました、とばかりに
へび呼ロイドが言う。

居たのか。
自力で抜け出せたのか、牢の窓。

「そうだな、出来ればお前らが食べたって言う。
 東一族のお宿の料理とか食いたいな」

アヅチはちょっと空腹で
イライラしている。

さっきの実験カレーは
物が物だったので
何だか食べた気がしない、らしい。

「その件にかんしては、
 おいら達だって、アヅチには悪いと思ってるんだ。
 でも、食事をとらないわけにはいかないし」
「……そりゃそうだろうけど」
「アヅチだってお宿の料理食べたかった、よね」

「ああ」

なんだか大人げなかったな、と
アヅチは怒りを収める。
次回東の村に行ったときに楽しめたらそれで

「だから、おいら
 ルームサービスを包んで持ってきて」

「おわああああああああああ!!!!」
「いやああああああああああ!!!!」

ふと、懐の四次元な空間から
へび呼ロイドが取り出した、
袋に包まれた、何か、を

「こっち持ってくんな!!!」
「ねまってるー!!」

「なに、なに
 ねまってるってなに~」

無邪気にへび呼ロイドがその物体を
持っているが、
アヅチはそれを

掴んで、
助走を付けて、
円盤投げのようにグルグルと回り。

「でやああああああ!!」

遙か遠くに投げた。

思い出して欲しい、
マツバ達が東で料理を食べたのはいつか。
そして、延々と砂漠を歩き続けた事と、
その間、へび呼ロイドの懐で
温められていた料理を。

「つまり、ねまるってそういう事よ!!」

方言です。マツバの解説でした。

飛んでいった料理はスタッフが以下略。

「あぁあ、無駄に動いてお腹空くじゃない。
 でも、ここの料理はなんだかな、だし」
「早く用事を済ませて
 次の村に向かうしかない、のか」

2人の言葉に
へび呼ロイドは眼を輝かせる。

「じゃあ2人とも、
 おいら達の同僚を捜してくれていたんだね」

こんなに、一生懸命になって。

「まて、へび呼ロイド
 お前の言い分は分かっている!!」
「だけど、待って
 それより先に済ませないといけない事があるの」

ざっ!!

「え?え?」

アヅチとマツバはとある店舗の前に立つ。
2人はひたすらここを目指して進んでいたのだ。

「よろしく!!」
「お願いします!!」

どーん、と
2人は勢いよく、店のドアを開ける。

「この頭!!」
「どうにかして!!」
「「理容師さーん!!!」」

みんなの頭はぼーん、のままだった。



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