「あ、れ・・・?」
満樹ははっとする。
「ここ、は?」
東一族の村。
いつも通りの、景色。
「・・・・・・?」
満樹は首を傾げる。
何だろう。
腑に落ちない。
「おい、満樹!」
誰かが声をかけてくる。
「今夜、務めだろう」
「ああ・・・?」
「少し休んでおけよ」
「判って、る」
その背中を見送って、満樹は立ち上がる。
あたりを見る。
歩き出す。
見知った道。
満樹は歩く。
なぜここにいるのか。
何をしていたのか。
思い出せない。
ぼんやりとした、頭。
とにかく、一旦、帰ろう。
日が落ちたら、務めの前に、大将のもとへと行かなければならない。
途中、満樹は屋敷の横を通る。
東一族宗主の屋敷。
ここで、若い東一族は鍛錬を積み、課業に参加する。
満樹もそうだ。
幼いころから参加し、今も、戦術師として自身を高めるために。
満樹は同じ敷地内の、別の建物を見る。
そこは、戦術大師がいる、東一族守りの要の場所。
占術大師が占いを行う、場所。
満樹の父親は、占術師としてここにいる。
その務めを果たしている。
誰だったかに聞いた。
満樹の父親は、高等な占術師の家系だったと。
占術大師に抜擢されるほどの力を、持っている、と。
けれども、今
占術師として、父親の地位は高くない。
それがなぜなのか、は、誰も知らない。
聞いてはいけない、の、だろう。
占術師としての力は、魔法の苦手な満樹には恵まれなかった。
父親の能力は、ここで絶える。
と、
「父さん・・・?」
目の前に、父親がいる。
「いつの間に・・・?」
「どうした?」
「いや、・・・何も」
「調子でも悪いのか」
「そんなことはないけど・・・」
父親は首を傾げる。
「務めは終わったのか」
「務めは今夜だから」
「なら、一度帰るのだな」
「そう」
ふたりは歩き出す。
「ずいぶんと久しぶりだな」
「・・・そんな気がする」
「市場にでも行くか」
「市場?」
「食事に」
「・・・・・・」
「どうだ?」
「いいけど」
市場に着くと、父親はいつもの店へと入る。
そう、同じ店。
父親が行くのは、ここだけ。
この店が好きなのか、と、満樹は店を見る。
席に坐ると、父親は料理を頼む。
飲みものも。
満樹は、同じものを食べようと、料理が運ばれてくるのを待つ。
NEXT
満樹ははっとする。
「ここ、は?」
東一族の村。
いつも通りの、景色。
「・・・・・・?」
満樹は首を傾げる。
何だろう。
腑に落ちない。
「おい、満樹!」
誰かが声をかけてくる。
「今夜、務めだろう」
「ああ・・・?」
「少し休んでおけよ」
「判って、る」
その背中を見送って、満樹は立ち上がる。
あたりを見る。
歩き出す。
見知った道。
満樹は歩く。
なぜここにいるのか。
何をしていたのか。
思い出せない。
ぼんやりとした、頭。
とにかく、一旦、帰ろう。
日が落ちたら、務めの前に、大将のもとへと行かなければならない。
途中、満樹は屋敷の横を通る。
東一族宗主の屋敷。
ここで、若い東一族は鍛錬を積み、課業に参加する。
満樹もそうだ。
幼いころから参加し、今も、戦術師として自身を高めるために。
満樹は同じ敷地内の、別の建物を見る。
そこは、戦術大師がいる、東一族守りの要の場所。
占術大師が占いを行う、場所。
満樹の父親は、占術師としてここにいる。
その務めを果たしている。
誰だったかに聞いた。
満樹の父親は、高等な占術師の家系だったと。
占術大師に抜擢されるほどの力を、持っている、と。
けれども、今
占術師として、父親の地位は高くない。
それがなぜなのか、は、誰も知らない。
聞いてはいけない、の、だろう。
占術師としての力は、魔法の苦手な満樹には恵まれなかった。
父親の能力は、ここで絶える。
と、
「父さん・・・?」
目の前に、父親がいる。
「いつの間に・・・?」
「どうした?」
「いや、・・・何も」
「調子でも悪いのか」
「そんなことはないけど・・・」
父親は首を傾げる。
「務めは終わったのか」
「務めは今夜だから」
「なら、一度帰るのだな」
「そう」
ふたりは歩き出す。
「ずいぶんと久しぶりだな」
「・・・そんな気がする」
「市場にでも行くか」
「市場?」
「食事に」
「・・・・・・」
「どうだ?」
「いいけど」
市場に着くと、父親はいつもの店へと入る。
そう、同じ店。
父親が行くのは、ここだけ。
この店が好きなのか、と、満樹は店を見る。
席に坐ると、父親は料理を頼む。
飲みものも。
満樹は、同じものを食べようと、料理が運ばれてくるのを待つ。
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