満樹は父親を見る。
父親は、持っていた占術師の道具を置く。
細かいものと、杖。
ずっと使っているものなのだろう。
道具は、旧い。
満樹の視線に気付き、父親は云う。
「ずいぶんと旧いだろう」
「ああ」
「代々使われていたものだからな」
「・・・そう」
「せっかく受け継いだのに、」
「・・・・・・」
「お前の祖父には、ずいぶんとがっかりされて・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「父さん」
満樹は云う。
「前々から、聞きたかったのだけど、・・・」
「何だ」
「その、」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「食べるか」
父親は、運ばれてきた食事に、手を伸ばす。
満樹は、食事を見つめる。
「お前の母親と、ここに来ていたんだ」
「この店に?」
「そう」
父親が頷く。
「まだ、ふたりのころに」
子である満樹が、生まれる前、と云うことだ。
「今でこそ、家にいることが多いが、昔はよく外を歩いていた」
「母さんが?」
「家にこもっている今では、想像もつかないだろう」
満樹は、父親を見る。
確かに、母親は家にいる。
外出するのは、年に何度もない。
「父さんと母さんはいったい・・・」
「成人の儀の前に、だ」
「うん」
「ひとりずつ今後を視てもらうのを覚えているか」
「ああ」
父親は話し出す。
東一族は成人する前に、占術師に啓示のようなものを受ける。
全員が、それぞれ。
満樹も数年前のことだ。記憶はある。
「当時の占術大師に、こう云われた」
「何と?」
「結婚する相手を選べ、と」
「・・・・・・?」
「それで、先の人生が決まるだろう、とな」
「それはどう云う?」
「そのときは判らなかった」
「・・・・・・」
「こんなにも、自身の地位が下がる、とは」
「・・・・・・」
それは
「祖父にがっかりされたと云うのも・・・」
そして
「母さんが、周りの目を避けているのも、」
「母親も、似たようなことを云われた」
「似たようなこと?」
「結婚は避けた方がいい、とな」
「・・・・・・」
皆と同じ、普通の東一族
とは
少し違う、家庭なような気はしていた。
でも、周りの知人は何も気には留めないし
自身も、気付かないふりをしていた。
「・・・父さん」
つまり
自分は
「混血と云うこと・・・?」
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