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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」199

2020年02月18日 | 物語「約束の夜」
「あ、れ・・・?」

満樹ははっとする。

「ここ、は?」

東一族の村。

いつも通りの、景色。

「・・・・・・?」

満樹は首を傾げる。
何だろう。
腑に落ちない。


「おい、満樹!」

誰かが声をかけてくる。

「今夜、務めだろう」
「ああ・・・?」
「少し休んでおけよ」
「判って、る」

その背中を見送って、満樹は立ち上がる。
あたりを見る。

歩き出す。

見知った道。

満樹は歩く。

なぜここにいるのか。
何をしていたのか。

思い出せない。
ぼんやりとした、頭。

とにかく、一旦、帰ろう。
日が落ちたら、務めの前に、大将のもとへと行かなければならない。

途中、満樹は屋敷の横を通る。
東一族宗主の屋敷。

ここで、若い東一族は鍛錬を積み、課業に参加する。
満樹もそうだ。
幼いころから参加し、今も、戦術師として自身を高めるために。

満樹は同じ敷地内の、別の建物を見る。

そこは、戦術大師がいる、東一族守りの要の場所。
占術大師が占いを行う、場所。

満樹の父親は、占術師としてここにいる。
その務めを果たしている。

誰だったかに聞いた。

満樹の父親は、高等な占術師の家系だったと。
占術大師に抜擢されるほどの力を、持っている、と。

けれども、今

占術師として、父親の地位は高くない。
それがなぜなのか、は、誰も知らない。
聞いてはいけない、の、だろう。

占術師としての力は、魔法の苦手な満樹には恵まれなかった。

父親の能力は、ここで絶える。

と、

「父さん・・・?」

目の前に、父親がいる。

「いつの間に・・・?」
「どうした?」
「いや、・・・何も」
「調子でも悪いのか」
「そんなことはないけど・・・」

父親は首を傾げる。

「務めは終わったのか」
「務めは今夜だから」
「なら、一度帰るのだな」
「そう」

ふたりは歩き出す。

「ずいぶんと久しぶりだな」
「・・・そんな気がする」
「市場にでも行くか」
「市場?」
「食事に」
「・・・・・・」
「どうだ?」
「いいけど」

市場に着くと、父親はいつもの店へと入る。
そう、同じ店。
父親が行くのは、ここだけ。

この店が好きなのか、と、満樹は店を見る。

席に坐ると、父親は料理を頼む。
飲みものも。

満樹は、同じものを食べようと、料理が運ばれてくるのを待つ。




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