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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」224

2020年06月26日 | 物語「約束の夜」
「ああ、そうだ。京子」

耀が云う。

「生け贄に必要な数は、8」

「でも、私たちは」

京子は息をのむ。

西、の血を引く者が、ふたり。

つまり

「お兄ちゃん・・・」
「生け贄は、お前だ」

「あなたねぇ!」

マサシが声を上げる。

「あなたと京子ちゃんは、私たち以上の兄妹でしょう!?」

京子の顔は真っ青だ。

「それを、そう簡単に!!」
「決められていたことじゃないか」

耀は、冷笑する。

「何度聞くのか? 俺たちは用意された子だと」
「何を認めているの!」

マサシの言葉をものともせず、耀は続ける。

「ばからしいじゃないか」

この場所で

「逃げることも抵抗することも、何ひとつ出来ない」

「そんな・・・」
「考えるだけ無駄だ」
「死ぬの?」

ぽつりと、京子が云う。

「私は今まで何のために」

生きてきたのか。

生け贄となるために?

この父親の、何か願いを叶えるためだけに。

「あまり、時間を使うな」

耀とチドリの後ろから、声がする。

「説明がないのも可哀相だが、説明を続けても何になる」

どうせ

「その命、捧げるのだから」

父親が云う。

「さあ、はじめようか」

その言葉と同時に
無機質な部屋に、魔方陣が現れる。

「これは!?」

チドリは目を閉じる。

皆の身体に光が集まる。

と、

「おい!!」

ノギとオトミが走り出す。

「!!?」

「散れ!」

「!!」

「ばかなことを!!」

逃げろ、と

この瞬間に。

「京子!」

「ツイナ!!」

皆、動こうとする。

ほんの一瞬。

時の流れが、ゆっくりと。

「逃げられるわけがない!!」

耀とチドリの声。

その様子を
おかしそうに、父親は見る。




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