きっと、私を探していたんだわ。
なんて
先ほどの「誰だっけ?」の台詞を忘れ
ナタは、都合がいいように解釈する。
一晩でもいいんだけど、
運命の人、とかも、いいんじゃない?
ナタはニヤニヤする。
「あのさ」
「何?」
「砂一族って、みんなそうなの?」
「えっ、何の話?」
「そのニヤニヤとか」
「笑顔よ、笑顔!」
「ふぅん」
しばらくして、ナタは起き上がる。
「ねぇ、このまま砂一族の村にいたらいいんじゃない?」
「そう?」
「あんた、いい男だし」
「俺が他一族の諜報員とか思わないのか?」
「だったら何なのよ」
砂一族の刑を受けるぐらいだろう。
「だって、観光とかじゃないでしょ?」
「・・・・・・」
「どう?」
「するどいな」
「だから、ここにいたらって云ってるの」
「俺は、何かを求めて旅してる感じ?」
「当たってるでしょ?」
ナタは云う。
「ここに、あなたが探すものがあるわ」
「俺が何を探しているか、知ってる?」
「どうせ、居場所、でしょ」
「そうだな」
彼は遠くを見る。
窓から夜空が見える。
「ここは、星がきれいだ」
「ええ」
「どこよりも」
「ほかの場所は知らないわ」
「空に、あんなにたくさんの星があって」
「・・・・・・?」
「ほしいものは見つかるだろうか」
「何それ」
「見つけたいもの」
「目印を付けたら、いいんじゃない?」
彼は笑う。
手を出す。
「ほら」
「何?」
「手のひらのアザ」
「うん」
ナタはそのアザを見る。
「ケガをしたの?」
「いや、違う。俺の目印だ」
「あら、判りやすい」
「これまで生まれた子どもも、みんな、このアザがある」
「そう」
ナタは云う。
「何? 子だくさんなの?」
「さあ、どうかな」
「どう云うこと?」
「母親たちに、任せっぱなしだからだよ」
「ふうん」
ナタは、ツバサにまとわりつく。
「私が産む子も、アザがあるのかしら」
「あると思うよ」
「目印とかいいから、この村にいてよ」
「どうしようかな」
ツバサは呟く。
「他にやることもあるしな」
ナタは、首を傾げる。
やがて
ナタに子どもが出来たと判ったころ。
彼は、砂一族の村から姿を消した。
「あーあ、いい男だったのになぁ」
自身のお腹をさすり、その子に云う。
「あんたも、いい男になるんだよ」
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