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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」89

2018年07月24日 | 物語「約束の夜」

「ええっと、
 携帯食料に、薬、それから」

京子は西一族の商店で旅立ちの準備をする。
兄を捜して
裏一族を追っていた今までの旅とは少し違う。

もしかしたら、戦いになるかもしれない。
そう思うと揃える物も違ってくる。

「短刀はもう一本あった方が良いかな?
 買うと高いから
 家にあるもので」

狩りの道具コーナーを物色する京子。

「あ、この短刀ケースかわいい。
 折角だから新調しちゃおうかな」

買い物カゴにイン。
そこでふと立ち止まる。

「待って。そうしたらブーツとの色合いが合わない。
 これはブーツも思い切っちゃうか!!」

それから日用雑貨の棚に回る。

「保湿クリームは
 一週間旅行用を買うとして。
 ……おかし!!お菓子も必要ね!!」

甘味は大事。
西一族のお菓子を2人にも食べさせたい。

「ハンカチにティッシュ。
 それからそれから」
「……………」
「薬といえば、頭痛薬、胃薬、風邪薬、目薬も
 いざという時役に立つのでは!!」
「…………」
「なんだがバッグに入らない気がしてきた。
 これは新しいバッグも買うべき!?」

うーんと、見るに見かねて
同じ店内に居た西一族が声をかける。

「それ、荷物になるだろ」
「えぇっ!?」

痛いところを突かれて
ぐぬぬ、と反論する京子。

「何かあったとき
 持っていかずに後悔するよりは」
「充分旅先でも揃うだろ」

確かに。

旅先には財布さえ持っていけば良い派とみた。

「ほおって置いてよ、悟(さとる)」
「よう。
 お前、美和子とケンカしたんだって」
「もう、この村、噂が回るの早すぎでしょう」
「ははは」

笑いながら、
悟が京子の横を通り過ぎる。

「俺は言ったぞ。
 『美和子には気をつけろ』と」

「え?」

そう言えば、
美和子と2人南一族の村に向かった時
悟は同じ馬車に乗り合わせていたのだった。

その時、悟は
京子にだけ聞こえるように言っていた。

『気をつけろ』と。

「………悟、
 あなたどこまで知っているの?」
「なんの話しだ?」
「美和子の事、とか」

ただの偶然だろうか。

「そりゃ、性格が違う2人が集まれば
 何かあると思うだろ」
「あ、そっち!!」

そっちでしたか。

「ただ、もう一度言うぞ。
『美和子には気をつけろ』」
「!!」

「……今のどういう」
「あ、圭じゃないか、
 お前配給の肉は受け取りに行ったのか?
 おっと、それじゃあな、京子」

悟は店を出て
通りを歩いていた別の者に話しかけている。

ただのケンカの仲裁にも聞こえる。
けれど、
裏一族は自然に紛れ込む、なんて話を聞いた後では
色々な事が怪しく思える。

あの人も、この人も。

「もうこんな事、早く終わらせたい。
 大体、裏一族と我が家は
 なんの縁もないでしょうに」

どうして目を付けられたのだろう。

「誕生日までには、カタがついているかしら」

兄の誕生日のひと月遅れ。
もうすぐ、京子の誕生日だ。



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