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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」19

2017年09月19日 | 物語「約束の夜」


「耀、
 見つからなかったって?」
「そうなのよ」

北一族の村から帰ってきて数日。
狩りで使った道具を磨きながら
京子はうなだれる。

「でも、まぁ。
 思ったよりは落ち込んでないわよ」

はい、と
研ぎ終えた小刀を渡し、
次の道具にとりかかる。

「それは重いだろ。代わるよ」
「ありがと、巧(たくみ)。
 じゃあお言葉に甘えて」

今日の狩りは良い成果を出した。
班のメンバーが粒ぞろいだったこともある。

「………捌き終えたけど」

川沿いから広司(こうじ)が帰ってくる。

「もう終わったの!?
 早いわね。どれどれ」

獲物を捌き終えるまでが狩りだ。

「上手に出来てるわ。
 狩りの時も思ったけど
 あなた、手際が良いわよ」

広司は嫌がって避けるが
京子は頭をよしよしとなで回す。

「年上ぶるな」
「年上だもの」

西一族の若者は、
一族の風習として狩りを行う。

幼い頃から訓練を始めるが、
広司ぐらいの年頃になると
本格的に狩りの一員として参加するようになる。

「腕前が良いのは分かるけど。
 頑張りすぎず、息抜きもしないと」
「俺は役立たずとは違う」
「なに?
 広司は役立たずじゃないわよ。
 そんな事気にしていたの??」

おぅい、と巧が割って入る。

「京子、あんまり広司を
 からかってやるな」
「からかってません。
 これは、そう。
 先輩からのアドバイスよ」

それがからかってるって言うんだ、と
巧が呆れる。

「悪いな広司。
 こいつ初めて後輩?が出来て
 先輩風を吹かせたいだけなんだよ」
「知ってる」
「だよな」

「なによ。
 男二人で意気投合して」

頬を膨らませかけた京子は、
あ!!!
と、突然大きな声を上げる。

「美和子だ。
 巧、ちょっと行ってくる!!」

それだけ言うと
京子は、美和子の名を呼びながら駆けていく。

「………騒がしい」

やっと解放された、と
広司が呟く。

狩りの間も
よく口が動くんだよ。と
今日の班長である巧はあきれる。

「早く終わらせて帰ろう」
「そうだな。
 広司の方がちゃんとしている」

それにしても、と
広司は京子が駆けていった方を見る。

「珍しい組み合わせ」
「確かに」

わいわい騒がしい京子と
落ち着きがあって
すっと、仕事をこなすタイプの美和子。

「なんか、共通の趣味でもあるんじゃないのか」
「………趣味」
「小物細工、とか。
 西刺繍とか……女子会、とか」
「美和子はともかく」
「京子がなぁ」

こっそりと、巧と広司が笑う。



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