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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

水辺童話:みずうみのばけもののはなし4

2017年07月04日 | 物語

ギャズンを倒すため、
各一族の選りすぐりの者達が集められました。

どうすれば上手くいくのか
時にはケンカをしながら
今まで仲が悪かった一族とも
時間をかけて話し合いました。

いよいよ決戦の日。

海辺に暮らす一族が
皆を舟に乗せて漕ぎ出します。

湖の中心に近づけば近づくほど
波は大きくなりますが
普段荒れた海にも繰り出す彼らには
なんてことはありません。

見事に目的地に辿り着きました。

「見ろ、あそこだ。
 みんな構えるんだ!!」

舟の先頭に立つのは谷に暮らす者達です。
彼らは目が三つあるのではないか
と言うほど、遠くまで見通すことが出来るのです。

どこが危ないか、どこなら安全か
指示を出す係を受け持ちます。

ざざーーーーん。
どぉおおおおん。

まるで湖が割れるような音がして
ギャズンがそこから現れました。

最初は熊ほどの大きさだったギャズンが
なんと、
小島ほどの大きさに姿を変えていたのです。

皆が恐怖におののくほど、
ギャズンの姿は大きくなっていきます。

「ひるむな、今日は皆が一緒だ!!」

南の一族の若者が叫びます。

その声にはっとした、
西と山の一族がギャズンに矢を放ちます。
普段から狩りを行う彼らは
次々と矢を命中させていきます。

前は矢が刺さるだけでは
ギャズンはびくともしませんでした。
でも、今日は少し違います。

薬を作るのが得意な砂漠の一族が
とても強力な毒を作り、
その毒を矢の先にこれでもかと言うほど
塗りつけていたのです。

ギャズンは毒に震えます。

舟を沈めようと
そのヘドロから沢山の腕を伸ばします。

そのたび、
海の一族は舟を必死に漕ぎ
ギャズンが湖に潜り姿をくらませても
谷の一族がすぐにその姿を見つけます。
砂漠の一族は
出血サービスと毒を重ね塗りして
西と山の一族が何度も何度も
その矢を放ちます。

そうしている間に、
別の舟に乗って控えていた
東と北の一族が
ギャズンを囲むように四隅に回り込みます。

「そおれ」

北の一族が合図の火花を散らします。
普段は七色の火花ですが
今日は特別、八色です。

それを見て、皆はギャズンからどんどん離れていきます。
いよいよ封印が始まります。

皆が安全な所に逃げたのを確認して
東の一族が一斉に呪文を唱え始めました。

北の一族はギャズンが動かないように
魔法で動きを止めます。

どこか、遠く、
湖の底でしょうか
それとも別の何も無い世界でしょうか
二度とこの世界で暴れないように
皆は祈りを込めます。

あと少し。

「おぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁあああ!」

ですが、ギャズンは必死の抵抗で
北の一族の魔法を振り切ろうと暴れます。

「抵抗が激しすぎる」
「なんてことだ、
 この封印の魔法は
 ギャズンの動きを完全に止めないと発動できない」

東の一族の者が顔をゆがめます。
このままではなんとか術を発動しても、
ギャズンを半分しか閉じ込めることが出来ません。

「上半身か、下半身か」

とても盛大な封印術を使っているため
体力が削られていきます。
失敗してしまえば二度目はありません。

今日のために、仲が悪い者達も
そうでない者達も、皆が協力しているのに。

「俺に、任せて欲しい」

南の一族の青年が舟の先頭に立ちます。

彼の一族にはある一つの魔法がありました。
でも、それは
彼の命を落としてしまうかもしれない
とても危険な魔法でした。

本当に大事な時にしか
使ってはいけないと教えられた魔法でした。

彼にとっては
今がその時でした。

「          」

今まで誰も聞いたことが無いような
不思議な呪文を唱えながら
舟の先頭からギャズンに向かって飛び込みます。

彼はとてもまばゆい光を
放ちました。

「おぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁあああ!!」

ギャズンも
味方の動きさえも止めてしまう
とても強力な光でした。

不思議です。

ギャズンがだんだんと小さくなっていきます。

「なんということだ」

彼の働きを無駄にはしない。

最後の力を振り絞って
東の一族は封印の呪文を唱えます。

「おぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁぁぁ……」

あまりにまばゆい光に
周りの景色が見えなくなりました。


ぎゃあずん。


最後にそう叫び、
ギャズンの姿は見えなくなりました。



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