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水辺童話:「末姫と大蛇」4

2017年07月07日 | 物語

 夜が明けて

 ひとりの兄が目をこらしました。

 国を囲む大蛇の姿はどこにもありません。

 そう

 毒の餌を食べて死んだしまったのでしょう。
 そのまま、消えてしまいました。

「大蛇が消えたぞ!」
「やったぞ!」
「助かった助かった!」

 みんな大喜びです。
 国中が、お祭り騒ぎになりました。

 王様が云いました。

「我が末姫は英雄だ!」

 そうだそうだと、みんな、末姫を称えました。

 けれども、

 いつまで待っても、末姫は戻ってきません。

 兄たちが慌てて、国外れに向かいました。
 大蛇の顔があったところへ。

 そこに、

 末姫はいません。

 兄が、ひとつの鉱石を拾いました。

 それは、いつだったか
 ひとりの兄が、末姫のために作ったもの。

 兄たちは末姫の死を、悟りました。

「何てことだ……」

 兄たちは、その鉱石を持ち帰り、王様に渡しました。

 何も出来なかったけれど

 末姫は

 いつもいつも仕合わせでした。

 笑顔でした。

 その笑顔が、みんな大好きだったのです。

 みんなみんな泣きました。

 王様も
 8人の兄たちも
 国の人々も。

 泣いて

 泣いて

 みんなの涙は、やがて

 大きな水辺になりました。

 素晴らしかったお城は、その水辺に沈んでしまいました。

 それでもみんな泣き続けます。
 誰も泣き止みません。

 けれども

 ひとりの兄が云いました。

「もう、泣くのはやめよう」

 そう、立ち上がりました。

「泣いても、末姫は戻ってこない」

 ほかの兄も云います。

「我々が泣き続けると、末姫も哀しいだろう」

 みんな立ち上がりました。

 8人の兄たちは誓いました。

 ――末姫のために、この、流した涙で出来た水辺を守ろう、と。

 8人の兄たちは、水辺の周りにそれぞれ移動しました。
 人々もそれぞれに移動しました。

 やがて、

 8人の兄たちを筆頭とした一族が生まれたのです。

 私たち、水辺の一族は、
 もともとは、仲の良い兄妹と、同じ国の者だったのです。

 ですから

 みんな仲良くしなければなりませんね。



 これが、水辺のはじまり
 8一族のはじまり

 の、話のひとつと、云い伝えられています。





T.B.はじまりのころ。ある国の末姫の話。

おしまい

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