TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」39

2013年12月17日 | 物語「水辺ノ夢」
診察室に入って来た圭に
高子が声をかける。

「彼女、あれから大丈夫?」

杏子の事だと分かり、圭は頷く。

「すっかり良いみたいだ
 ありがとう。助かったよ」
「そう、なら良かったわ」

高子は圭にイスに座るよう進める。
それから自分も対面のイスに座り
あらかじめ準備されていたカルテを開く。
専門用語が並び、圭には
それが意図する事を読み取れない。

「貴方のおばあさんだけど
 あまり、良い状態とは言えないわ」

高子の言葉に圭は息を飲む。

「え?
 だって定期的に退院しているじゃないか
 この前だって、一時帰宅してきたし」

圭はそれが回復の兆しだと
思っていた。
正式な退院まであと少しなのだと。

「この先を考えると、ね
 なんとか帰れるうちに、と思って」
「……そんな」
「補佐役の方には話してあったのだけど
 貴方には伝わって無かったのね」

補佐役は圭の親戚で
圭と圭の祖母の後見人をしている。
仕方なく、なのは圭も分かっている。
実際補佐役の男は
一族の足を引っ張っている圭が自分と親戚だというとこを
疎ましく思っている節がある。

圭は項垂れる。

「そんな風には見えなかった」
「今は、なんとか薬で保っている状態なの」
「……回復する見込みは?」

高子は一度言葉を濁す。

「手術をしたら、あるいは」
「だったら、それを!!」

「詳しく言うと、
 手術をしても回復するかどうかの割合は半分程。
 それに、とても費用がかかるの。
 金額は補佐役の方には伝えてあるから
 後で話してみるといいわ」

「高いの、か」

圭は服の裾を握りしめる。
高子は続けて言う。

「高齢だから体力も気になる所よ。
 どうするか、じっくり考えてから決めてちょうだい」


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