「私の村に来てみない?」
その日、私は『カイ』にそう言った。
『カイ』は驚いたような表情を一瞬見せて、急に静かになった。
「……そうだな」
とても静かな午後だったと思う。
『カイ』はそれからもしばらく黙りこけて、
なかなか返事をしなかった。
額に手を当ててしばらく唸った後、今度は空を見上げた。
手を胸の前で組んでいたので、
一瞬だけ、神様に祈る時の姿に見えた。
「あぁ、そうだな」
『カイ』はどこか自分に言い聞かせるように、
消え入りそうな声で答えた。
「―――そうしよう」
私は次にこの町に来る日取りを『カイ』に教えた。
私たちの話は
どこまで本当で、どこからが冗談か
自分達でもよく分かってなかった。
それとも『カイ』は
何か目的があったのだろうか。
私たちの村に来て、
やり遂げたい何かが、あったのだろうか。
結局それは聞けなかったけれど。
上手くいったら、
今度は私が『カイ』の村に連れて行って貰おうと思った。
そこに行きたかったかというと
そうでもない。
どんな所かは気になる程度の事。
でも、私が居なくなったら、
あの人は心配するだろうか。
なんて。
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