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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」40

2013年12月20日 | 物語「水辺ノ夢」

圭は、病院を後にする。

もう一度、病室へと立ち寄ったが、祖母はすでに眠りについていた。
声をかけられなかったが、また、近いうちに来ればいいだけのこと。

病院を出て、圭はため息をつく。

頭の中は、祖母のことでいっぱいだった。

どうしたらよいのだろう。
祖母は、圭にとって、たったひとりの家族だ。
どこにいるのかわからない両親に代わって、圭を育ててくれた。

その祖母が、もう・・・。

けれども
手術をするならば、お金はどうする?

家には、お金はない。
頼れる人も、いない。

圭は、ふらふらと、家路を歩く。

「病院に、行ってきたのか」

突然声をかけられて、圭は、びくりとする。
立ち止まり、振り返る。

そこに

「叔父さん・・・」

補佐役の男が立っている。

「お金がいるんだろ?」

圭は、補佐役から目をそらす。

高子が、補佐役に伝えたと云った。
補佐役は、祖母の症状も、手術にかかるお金も知っているのだろう。

「助けてやれないこともない」
「え?」
その言葉に、圭は、思わず補佐役を見る。
補佐役が云う。
「圭、お前次第だけどな」
「それは・・・」
「お金が、必要なんだろ?」
同じ言葉に、圭は口を閉ざす。

そうだ。
お金が必要なのだ。

だから

今、自分にできることならば、やらなければならない。

――祖母 の、ために。

「簡単なことだ」
補佐役が云う。

「どんな手を使ってでも、あの東一族から、情報を引き出してこい」


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