浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

モリッツ・ローゼンタール ショパンのワルツ第5番を聴き比べ

2009年04月20日 | 洋琴弾き
昭和初期まで活躍したリストの弟子達の中でも取分け好きな洋琴家、モリッツ・ローゼンタールのショパンを久々に聴くことにした。HMVへの1934~37年のレコーディングにあるショパン作品は22タイトルあり、その中にワルツ第5番が2種類含まれてゐる。一つは1934年2月9日のファーストセッション、もう一つは翌35年11月21日に行なわれた第4セッションのテイクだ。

流れるやうな歌とセンスの良いテンポルバートが実に音楽的で、久しぶりに聴くと新鮮な驚きを感じるのだ。特に2拍子の主題をワルツのリズムに乗って歌い上げる部分の間合いは他では聴くことができない表現だ。あっさりとした部分と豪快なエンディングの間に絶妙のタイミングでテンポを動かして歌に命を吹き込む。このやうな神のなせる業をさらりと聴かせるローゼンタールのレコヲドは、全てが僕にとって宝物である。

基本的に2つのレコヲドの演奏スタイルは同じなのだが、結論から言ふと、僕はファーストテイクの方が好きだ。第4セッションでは音が弾んでゐて少々荒っぽい印象を受けるし、上記の再現部での2拍子の歌が単調になってゐて、ファーストセッションのときほどの有り難さを感じない。世界遺産的価値の有るローゼンタールのレコヲドなだけに、僕としては第4セッションではショパンの別の曲を弾いてもらいたかったものだ。

盤は、英國Appian P&RによるSP復刻CD CDAPR7002。


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