Unseasonable Shore

映画の感想を中心に、普通の生活をおくる30代ゲイの日々感じるできごと。

ムーンライト(ネタバレ注意)

2017-04-09 14:51:05 | 映画
今回は映画「ムーンライト」について。





アカデミー賞の作品賞に輝いた作品だということと、ゲイの男性をとりあげていることなどからとても興味がありました。


ここで内容を・・・




マイアミの貧困地域で、麻薬を常習している母親ポーラ(ナオミ・ハリス)と暮らす少年シャロン(アレックス・R・ヒバート)。学校ではチビと呼ばれていじめられ、母親からは育児放棄されている彼は、何かと面倒を見てくれる麻薬ディーラーのホアン(マハーシャラ・アリ)とその妻、唯一の友人のケビンだけが心の支えだった。そんな中、シャロンは同性のケビンを好きになる。そのことを誰にも言わなかったが……。



と書いてあります。



観終って、「人にやさしく接しようと思う」映画だと感じました。ケヴィンとシャロンの関係フアンとシャロンの関係、それぞれがとても素敵で暖かい気持ちになります。

映画は3部構成になっていて、1部は幼少期、2部は少年期、3部は青年となったシャロンなんですが、このそれぞれのシャロンが別人なのにもかかわらず、同じ一人の人間に見えるところがすごくて、しかもこの3人は撮影中に一度もあったことが無かったようなのです。監督が予定調和になるのを避けるためと言っていました。内面を掘り下げていくことで共通する感情を3人から引き出した監督の手腕がすごいです。

シャロンの母親を演じたナオミ・ハリスもすごくうまいと感じました。ドラッグにおぼれながら、母親としての葛藤を感じ、シャロンに冷たくあたり、そうかと思えば急にやさしくなったりと、シャロンにとってみても戸惑うようなことをしているこの母親の姿が非常にリアルでした。

あと、ウォンカーワイ監督のゲイ映画「ブエノスアイレス」にオマージュを捧げているところもあり、かなり影響されたと監督が言っているようです。

人種、貧困、ドラッグ、LGBTQ、いじめ、様々な問題をうまい音楽の使い方と、切ないストーリーにのせて描いている素晴らしい作品です。

この手の映画が好きじゃないかたも多いかもしれません。つまらないと感じる方もいると思います。でも、もし、興味があればご覧になってみてください。



ここからはネタバレ(ストーリーにふれています)です。ご覧になっていない方は読まないでくださいね。僕もこの映画はほとんど予備知識なく観ました。絶対そのほうがよいです。































2部の少年期のところで、ケヴィンとシャロンは海辺でキスをしてシャロンはケヴィンの手で初めて男性を知ることになります。1部で様々なことを教えてくれたフアンが亡くなってしまっていて(理由はわかりません)、不安を常に抱える状態になったシャロンにとって希望の光になったのです。でも、そのケヴィンにシャロンをいつもいじめていた学生が「シャロンを殴れ」と命令します。命令に従わないとケヴィンもいじめられてしまうから、ケヴィンはシャロンを殴ってしまうのです。そして、このいじめっ子達にも激しく暴行をくわえられます。この事件のあと、シャロンはこのいじめっ子を椅子でなぐり、殺人未遂で刑務所にいくことになるんです。
これは、自分の復讐というよりは、大好きなケヴィンをつらいめに合わせたことに対しての復讐なんだと感じました。

3部の成人してからのシャロンはたくましく見た目もフアンにそっくりになっていて、その仕事もフアンと同じドラッグのディーラーとなり、高級外車に乗り、拳銃を手にしています。母親は施設に入り、見舞いにいった時に「自分は良い母親ではなかった。シャロンには自分のようになってほしくない」と訴えます。涙を流すシャロンの姿にこっちもグッときました。

そして、あの事件以来会っていなかったケヴィンから連絡が入ります。今、自分は離婚して子供が一人、地元で食堂をやっているから、一度食べに来いと。なぜ急に会いたくなったかと聞けば、ある客がジュークボックスでかけた曲からシャロンのことを思い出したと言います。

車で地元に向かうシャロン。食堂で再開したシャロンとケヴィン。そしてその曲を聴きます。内容は昔の恋人を思う曲でした。

ケヴィンの家に行き、ケヴィンがシャロンに問います。「自分は結婚して、離婚して子供がいるが、お前はどうか?」と。
シャロンは「ケヴィン以外の人に触らせたことは無い」と答えるのです。

ここで、シャロンがゲイなのかと言えば、同性であるケヴィンのことを好きになるからそうだと言えばそうですが、ゲイというよりケヴィンが好きだったということで、男性だから好きになったわけではないというのが僕の感想です。ゲイなら他の男性にも目が向くと思うのですが、あれから誰とも関係を持っていないということは、ケヴィン以外は考えられなかったっていうことだと思うのです。大人になったシャロンは筋骨隆々で、ゲイ好みと言えばそうなのですが(笑)。

その言葉を聞いてケヴィンはあの海でのようにやさしくシャロンを肩に抱き、ラストシーンとなります。

僕がゲイだからかもしれませんが、すごく良いラストシーンでした。アカデミー賞の作品賞にふさわしい作品だと僕は思いました。