梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

少し手応え

2008年08月24日 | 芝居
今日の『勢獅子』は、出来は別として、別としてもとっても<楽しく>踊ることができました。祭礼に浮き立つ街角の風景を切り取った曲ですし、理屈はまったくいらない楽しい演目。早くこの一幕の雰囲気に馴染めるように、一昨日、昨日は苦闘したのですが…。
今日はいろんなことが気にならなくなりました。幕開きでは、本舞台から大勢の皆さんが「オォイ、オーイ」と呼んで下さる。その温かいお招きにあずかって、フワ~ッと花道を出ることができ、また自分のシヌキになるときには、升一さん音一郎さんの鳶頭が、目の前でなんとも楽しそうに踊っている、その気持ちがいっぱい伝わり、こちらの心もほぐれてまいりまして、ヘンに構えず流れにのって舞台中央に進み出て、本当にリラックスして踊ることができました。
御覧になった方の目に、どういう風に映ったかはわかりませんが、今日は本当に、気持ちで踊れました。嬉しい舞台でした。

本日は、B、Aの順でしたので、先に梅王丸の後見を勤めさせて頂き、いちおうでも舞台に出たことが、落ち着くことができた原因かもしれません。いきなり芸者で花道を出てゆく…。経験不足な私には、なかなかプレッシャーですよ。
…そうそう、この梅王丸の後見、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は2人で担当しております。幕開きの、浅葱幕の前での芝居中は、後輩が黒衣の後見を勤めております。と申しますのも、梅王丸は本舞台から揚幕まで<飛び六方>で引っ込んだ後、三本目の大太刀をつけなくてはなりません。このため、梅王丸の引っ込みより前に、誰かが揚幕で待機していなくてはなりませんが、本舞台に投げ捨てた編み笠の撤収も誰かがせねばならず、すくなくとも2人は黒衣の後見がいなくてはならないのです。
そこで今回は、浅葱幕前での後見を新人の後輩に勉強してもらい、揚幕での仕事と、そのあと幕切れまでの後見を私が勤めているというわけです。

その後輩も、後見をするのがこれではじめてなんだそうですが、とにかく場慣れして、本興行でのステップにして欲しいですね。