梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

No.44 <あとひと踏ん張り!>

2007年08月25日 | 芝居
A班は<千穐楽>、そしてB班は3日目。もう化粧道具を撤収できる仲間がいる中で、私の鏡台前はいっこうに片付きません、というかかなり散らかってしまっております…。そろそろ来月の巡業(詳細は後日)の準備もしなくてはならないし、明日は整理が大変です!

今日の舞台も落ち着いて演じることができました。緊張してしまうと、うっかりミスに(アチャ~)と冷や汗をかきながらの踊りになってしまうのですが、リラックスできていると、踊りながら自然に<気をつけること>が浮かんできます。常にそういう精神状態になれたらいいんですが。まだまだ修行不足ですね。
他の乗合船メンバーも、だいぶ肩の力が抜けてきたようです。私たちは出演者でありながら、床几に腰掛けて仲間の踊りを見守る観客でもあります。実際のお客様よりも近い距離で、仲間の表情、身体使いを見ておりますが、誰もが堅さがとれ、明るさが出てきたように思います。初日なぞ、手が震えている仲間を見ているうちに、こちらも余計に緊張してしまったりしましたからね。今は楽しそうに踊るみんなから、プラスのエネルギーを頂いております。

そうそう、すっかり書き忘れてしまったのですが、私の鳥追い、足袋を履くことになりました。発注のミスで素足にしてしまったのですが、鳥追いの風俗としては白足袋が正しいのです。おかげでだいぶ踊りやすくなりまして、助かっております。
お客様からは見えにくいかもしれませんが、黒繻子の帯に、手拭で包んだ三味線の撥を挟んでおります。三味線を抱えてるんですから撥も携えていませんとね。また、一仕事して頂いてきたという心で、茶半紙で包んだおひねりも入れております。こういう細かいアイテムで、より鳥追いらしく見えるのですね。

シヌキにも使う手拭は縮緬です。昨日までは<流れ水>の模様でしたが、「これ使ってみたら?」とおっしゃって先輩がお貸し下さった<源氏香に雀>の模様のものを、今日から使わせて頂いています。
私のシヌキは『角兵衛と女太夫』からの転用ですが、藤間の御宗家では、『角兵衛~』では演者の<比翼紋>の手拭を使うのだそうです。しかしながら、それをそのまま『乗合船』に持ってくると、雰囲気的に合わないのでは、と勘祖師がお考え下さり、<比翼紋以外>で、好みの柄のものを使うことになったのです。A班の澤村由蔵さんは、紀伊国屋ゆかりの<千鳥>模様になっていますよ。

さあ、泣いても笑っても明日で最後! 楽しくきちんと踊りきれるといいな…。
写真も撮りましたが、後日アップいたします。