梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

No.43 <もう折り返しですが…>

2007年08月24日 | 芝居
B班2日目。『乗合船』はだいぶリラックスして演じることができました。
手拭も引っ掛かることもなく、ホッといたしました。あんな恥ずかしいことは二度と起こしたくありませんからね! きちんと振りを演じおおせることが第一ですから、こうしたミスは絶対に避けたいので、油断なく取り組んでまいります。

『勧進帳』の後見も安心して勤めることができました。升一さんもますますどっしりとしてきました。今日のお客様はA~C~Bと、本当にお芝居への反応がようございまして、盛んな拍手を頂戴し、出演者一同感謝しておりました。やっぱり歌舞伎は拍手や大向こうに<雰囲気作り>をして頂くものです。もちろん演者がしっかり芝居をしなければ良い反応を頂けないことも事実ですが、今日の公演は、皆様の温かいお心に支えられたものと、厚く御礼申し上げます。

今日は『勧進帳』の後見について、ちょっとお話しさせて頂きたく存じます。
富樫の後見は私ですが、義経の後見は中村京三郎さん、弁慶のシン後見は市川升吉さん、ツケ後見は尾上松男さんが勤めております。
私や京三郎さんは、すでに経験済みですが、升吉さんや松男さんは今回が初体験となります。どの演目でも、後見の人選は『合同公演』実行幹事の話し合いで決めてまいりますが、今回の弁慶の後見二人に関しましては、<これから本興行でも勤めることになるであろう>人間にお願いしようということになりました。つまり、将来の本公演で、成田屋(海老蔵)さん、音羽屋(松緑)さんが弁慶をなさるときのことを想定したわけです。たとえ4日間の公演でも、一度経験した仕事は必ず身に付きますし、それが将来再び勤めるときに必ず役に立つ。今回の『合同公演』を機会に、おおいに勉強してもらおうということなんですね。
どんな役でも仕事でも、「やった人が一番強い」のが歌舞伎です。実際動いてみた感覚、肌で覚えた芝居の雰囲気は、何度見たところで、傍観者にはわからないことばかりです。そして、経験するなら早い方が良い。素直に<教われる>立場のうちに、いろんな先輩から話を聞いて自分の栄養にすること…。こういう点も配慮して、『合同公演』では総配役を決定していることは、是非お伝えしたく存じます。
同じようなことで申せば、『寺子屋』の黒四天。あの長時間の蹲踞が大変苦痛なお役に、今回先輩方が入っているのも、新人だけでは統率がとれないこと、そして先ほど申しましたように、経験者が混じることで、いわば<お手本>を示してもらい、それを後輩に学んで欲しいということなんです。黒四天だって、<揃った>動きをするのは難しいのです。
幸い黒四天に関しては、その先輩方が舞台稽古から連日、相当厳しく新人を指導してくれています。はたで見ていて嬉しく思いますが、それをどう吸収するかは本人次第。 若人頑張れ! と少々声を大にして申し上げておきます。

本当に、『勉強』会だなあ、と思う本年の楽屋です。