本日から<本稽古>に入った『合同公演』。稽古初日はなかなかハードな稽古割りです。
まず、午前9時より『乗合船』A・Bと『須磨』。ふだん11時開演の芝居に慣れきっている役者たちには、こういう時間は正直ニガテ…。しかし地方(じかた)さん、ご指導の藤間勘祖師はじめ、多くの関係者の皆様がお忙しい中時間をさいて下すったのですから、文句をいえた立場ではございません。栃木県在住の出演者などは、5時半起きで駆けつけました。
はじめての<生演奏>での踊り。当然ながら、ノリ、間合い、三味線の細かい節が変わりました。これまでの稽古で使ってきた音源を忘れ、新たな気持ちで曲に合わせてゆかねばなりません。まず最初に稽古することとなったA班の『乗合船』メンバーは、さぞ大変だったと思います。それに引きかえて私たちB班は、その様子を見ながら、ある意味<予習>できたからまだよかったですが、やはり緊張はいたしましたよ。
白酒売りや芸者、女船頭は着付の裾を引くのですが、より本番に近い形での稽古を、ということで、稽古用衣裳をお借りして稽古に臨んだとある後輩くん。はたせるかな踊ってゆくうちに裾が足に絡まってしまい苦しい戦い。改めて御宗家や一門の先輩から裾さばきの指導をうけておりました。見た目よく動いてこそ踊りなのでしょうから、是非とも初日までにマスターして欲しいです! かくいう私の鳥追いは裾を端折っておりますから、そういう悩みはないものの、数年前の『双面』ではやはり大苦戦いたしました。女形の踊りは、そういうところにも課題があるから大変です。
私自身の問題点は、首が前に出てしまい、老けて見えてしまうのが、絶対治さなくてはいけない<癖>。明日はもっと姿勢に意識をおいて演じなくては! 御宗家に申し訳ない思いでいっぱいなのですが、だったら早く治せ! ですよね…ああ……。
午後1時半より<顔寄せ>。48名の出演者と、関係者がうち揃いまして、いわば結団式ですね。
この場にご臨席頂いた、ご指導の幹部俳優さんから御挨拶がございましたが、『この暑い時期に稽古を重ねて大役に挑戦するみんなは、本当に<演じること>が好きなのだと思う。みんなは<歌舞伎俳優>にあこがれてこの世界に入ったのだと思うし、それは本当に嬉しいことだが、これからは<歌舞伎芝居>をもっと好きになってほしい。古典としての歌舞伎を、<芝居として>きちんと作り上げられる俳優になってほしい』という旨のお言葉がございまして、大変胸をうたれました。与えられた役を演じるだけで精一杯な我々ですが、その先にあるもの、先人から受け継がれた<型>や<心>を学んで、お客様に感銘を与えられるような一幕の物語を成立させるためには、台本の読み方や相手役との呼吸、芝居運びを、もっともっと勉強せねばならないのですね。またひとつ目から鱗が落ちる思いでした。『寺子屋』にしても『勧進帳』にしても、踊りの『乗合船』や『須磨の写絵』にしても共通の課題だと思います。
それから『寺子屋』A・B班、『勧進帳』と続きましたが、『寺子屋』の間は、ビデオに撮った今日の『乗合船』を見ながら仲間同士でダメ出し。各人各役の反省はもとより、総踊りの振りが揃っているか確認もし、自分たちで教えられる範囲のことは指摘し合いました。
直接『乗合船』に関わっていない先輩も、今日の稽古を御覧になっての感想やアドバイスを下さいます。これが勉強会ならではの助け合いの精神。みんなで『合同公演』をよいものにしていこうという気持ちが、本当に有難いです。
『勧進帳』も長唄囃子御連中が入りましたので、ますます深い稽古になりました。鳴り物の間合いや三味線のテンポにまで、事細かに成田屋(團十郎)さんがご指導下さいますので、あいまいな部分がどんどん無くなります。《歌舞伎十八番》としての格、市川家の芸を、こうした勉強会で受け継げる喜びを、稽古の度に感じてまいりましたが、その思いはさらに強いものになっております。
稽古後は全出演者でミーティング。チケットの取扱のことや明日以降の稽古の段取りのことなど。
ほぼ12時間、国立で過ごした1日でした。
さて、稽古も追い込みとなりましたが、またお一人、出演者からメッセージを頂きました。私の同期で大和屋(玉三郎)さん門下の坂東玉朗さんです。
玉朗さん、過日の《音の会》の『忠臣蔵 九段目』では、本蔵娘小浪を可憐に演じきったことは、ご記憶に新しいと存じます。合同公演では『源氏店』のお富や『十種香』の八重垣姫など、若女形としての大役に立て続けに挑戦していらっしゃいますが、今回は『須磨の写絵』の<村雨>で、初の踊りの演し物です。彼は本当に稽古熱心で、頭が下がりっぱなしなのですが、普段から楽しく付き合っている大切な仲間です。
初めまして。坂東玉朗です。梅子(梅之注・ワタシのことです)とは同期で、気兼ねなく話せて救われる事も多く、いつも同期のありがたさを思います。いやほんとに。
舞踊は苦手と思うばかりでしたが、この度お稽古頂いて、改めて自分のまずさを思い知りました。
『音の会』では小浪を勉強させて頂きました。いずれも大きな山ですが、登れる有難さをかみしめて参ります。
玉朗さんの一途さに負けないで、梅子も頑張ります!
まず、午前9時より『乗合船』A・Bと『須磨』。ふだん11時開演の芝居に慣れきっている役者たちには、こういう時間は正直ニガテ…。しかし地方(じかた)さん、ご指導の藤間勘祖師はじめ、多くの関係者の皆様がお忙しい中時間をさいて下すったのですから、文句をいえた立場ではございません。栃木県在住の出演者などは、5時半起きで駆けつけました。
はじめての<生演奏>での踊り。当然ながら、ノリ、間合い、三味線の細かい節が変わりました。これまでの稽古で使ってきた音源を忘れ、新たな気持ちで曲に合わせてゆかねばなりません。まず最初に稽古することとなったA班の『乗合船』メンバーは、さぞ大変だったと思います。それに引きかえて私たちB班は、その様子を見ながら、ある意味<予習>できたからまだよかったですが、やはり緊張はいたしましたよ。
白酒売りや芸者、女船頭は着付の裾を引くのですが、より本番に近い形での稽古を、ということで、稽古用衣裳をお借りして稽古に臨んだとある後輩くん。はたせるかな踊ってゆくうちに裾が足に絡まってしまい苦しい戦い。改めて御宗家や一門の先輩から裾さばきの指導をうけておりました。見た目よく動いてこそ踊りなのでしょうから、是非とも初日までにマスターして欲しいです! かくいう私の鳥追いは裾を端折っておりますから、そういう悩みはないものの、数年前の『双面』ではやはり大苦戦いたしました。女形の踊りは、そういうところにも課題があるから大変です。
私自身の問題点は、首が前に出てしまい、老けて見えてしまうのが、絶対治さなくてはいけない<癖>。明日はもっと姿勢に意識をおいて演じなくては! 御宗家に申し訳ない思いでいっぱいなのですが、だったら早く治せ! ですよね…ああ……。
午後1時半より<顔寄せ>。48名の出演者と、関係者がうち揃いまして、いわば結団式ですね。
この場にご臨席頂いた、ご指導の幹部俳優さんから御挨拶がございましたが、『この暑い時期に稽古を重ねて大役に挑戦するみんなは、本当に<演じること>が好きなのだと思う。みんなは<歌舞伎俳優>にあこがれてこの世界に入ったのだと思うし、それは本当に嬉しいことだが、これからは<歌舞伎芝居>をもっと好きになってほしい。古典としての歌舞伎を、<芝居として>きちんと作り上げられる俳優になってほしい』という旨のお言葉がございまして、大変胸をうたれました。与えられた役を演じるだけで精一杯な我々ですが、その先にあるもの、先人から受け継がれた<型>や<心>を学んで、お客様に感銘を与えられるような一幕の物語を成立させるためには、台本の読み方や相手役との呼吸、芝居運びを、もっともっと勉強せねばならないのですね。またひとつ目から鱗が落ちる思いでした。『寺子屋』にしても『勧進帳』にしても、踊りの『乗合船』や『須磨の写絵』にしても共通の課題だと思います。
それから『寺子屋』A・B班、『勧進帳』と続きましたが、『寺子屋』の間は、ビデオに撮った今日の『乗合船』を見ながら仲間同士でダメ出し。各人各役の反省はもとより、総踊りの振りが揃っているか確認もし、自分たちで教えられる範囲のことは指摘し合いました。
直接『乗合船』に関わっていない先輩も、今日の稽古を御覧になっての感想やアドバイスを下さいます。これが勉強会ならではの助け合いの精神。みんなで『合同公演』をよいものにしていこうという気持ちが、本当に有難いです。
『勧進帳』も長唄囃子御連中が入りましたので、ますます深い稽古になりました。鳴り物の間合いや三味線のテンポにまで、事細かに成田屋(團十郎)さんがご指導下さいますので、あいまいな部分がどんどん無くなります。《歌舞伎十八番》としての格、市川家の芸を、こうした勉強会で受け継げる喜びを、稽古の度に感じてまいりましたが、その思いはさらに強いものになっております。
稽古後は全出演者でミーティング。チケットの取扱のことや明日以降の稽古の段取りのことなど。
ほぼ12時間、国立で過ごした1日でした。
さて、稽古も追い込みとなりましたが、またお一人、出演者からメッセージを頂きました。私の同期で大和屋(玉三郎)さん門下の坂東玉朗さんです。
玉朗さん、過日の《音の会》の『忠臣蔵 九段目』では、本蔵娘小浪を可憐に演じきったことは、ご記憶に新しいと存じます。合同公演では『源氏店』のお富や『十種香』の八重垣姫など、若女形としての大役に立て続けに挑戦していらっしゃいますが、今回は『須磨の写絵』の<村雨>で、初の踊りの演し物です。彼は本当に稽古熱心で、頭が下がりっぱなしなのですが、普段から楽しく付き合っている大切な仲間です。
初めまして。坂東玉朗です。梅子(梅之注・ワタシのことです)とは同期で、気兼ねなく話せて救われる事も多く、いつも同期のありがたさを思います。いやほんとに。
舞踊は苦手と思うばかりでしたが、この度お稽古頂いて、改めて自分のまずさを思い知りました。
『音の会』では小浪を勉強させて頂きました。いずれも大きな山ですが、登れる有難さをかみしめて参ります。
玉朗さんの一途さに負けないで、梅子も頑張ります!