梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

浪花の風は熱かった…!!

2006年05月20日 | 芝居
本日、ル テアトル銀座にて、<平成若衆歌舞伎>東京公演『大坂男伊達流行(おおさかおとこだてばやり)』の夜の部を拝見してまいりました!
時は元禄。商家の跡取り息子達を中心とする<天神組>と、裏店生まれの若者らが集まっての<雁金組>の、二つの男伊達グループが町を二分する大坂が舞台。お互い意地を張り合い、いがみ合うなか、ふとしたきっかけで<天神組>のリーダーの妹と、<雁金組>のひとりが恋に堕ちてしまうことからはじまる悲劇。そこに、なにやらいわくありげな女侠客がからんだり、見るものを不幸にするという絵双紙の因縁がからみ、熱く激しく、そして悲しい物語がアップテンポで展開します。
約二時間半の舞台は色模様、殺し場、大立ち回りなど、見せ場盛りだくさんで飽きさせません。主演でいらっしゃる松嶋屋(愛之助)さんはじめ<平成若衆歌舞伎>の皆さんが、<上方>のにおい、空気を色濃く醸し出しながら演じていらっしゃり、大坂に散る若者達の青春が、ストレートに伝わってまいりました。舞台装置や群衆演出、音楽などにも様々な工夫が見られ、一観客として楽しく拝見すると同時に、一歌舞伎俳優として、同期といっても良いくらいの仲間達の奮闘に、改めて我が身を振り返り、負けてはおられぬと心を引き締めました。
明日がもう千穐楽ということで、もっともっと上演してほしいものと思うのですが、お時間に余裕のある方は、見逃しては絶対に損です! 是非是非明日のラストステージをご覧下さいませ。

「歌舞伎」というものを、様々な角度から捉える、幅広い試みが増えていることは、この世界にとりましては。とても大切なことと愚考いたします。そうした試みに、実際参加するにせよ、外側から拝見するにせよ、自身にとってなにがしかの勉強になることは確かでございますし、長き修行の過程での大切な経験として、血となり肉となると信じております。ただ大切なのは、日々の舞台を<地に足をつけて>勤めること、そこで身につけたことを新しい試みに応用し、新たな経験は普段の芝居に還元すること。新旧相互の舞台が別々なものにならず、よい意味で影響し合えればと思っております。
生意気な言いようになってしまいました。お昼にあった地震ぐらいで、舞台でうろたえていてはダメということですな…。