梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

活字にとらわれず

2006年05月18日 | 芝居
今日は第三場「もとの夜叉王住家」のお稽古でしたので、私は出番はございませんでした。
この場では、かつらの手負いになっての長台詞や、夜叉王の名台詞など、聞かせる台詞が多うございます。ラストを盛り上げるためにも、ここはしっかりとお客様に聞かせなくてはならないところで、紀伊国屋(田之助)さんも、よりいっそう細かなご指導をしてくださいました。…例えばかつらの長台詞は、瀕死の状態でいうわけですので、台本どおりの文章をそのまま喋らなくてもよく、例えば、台本には『この面(おもて)をつけてお身替わりと、早速(さそく)の分別…』とあるのを、「こ、この、この面をつけて…」というふうに、息も絶え絶えな有様を、言い回しで表現するという具合に、演者の考え、工夫で、いろいろとアレンジをしたほうが、より<伝わる>台詞になるのだそうです。万事原本、台本どおりに喋らなくてはならないという考え方も一方にはあるわけですが、今回の勉強会での上演では、監修である紀伊国屋さんのご意向もあり、<許される範囲内で>各自工夫をとりいれてまいります。ということは、自ずとA班、B班で変わってくるところも出てまいりますので、そういった点を見比べる、聴き比べる面白さもございましょう。

とりあえず<読み合わせ>は一通り終わりました。次は二十四日にもう一度お稽古をして頂きます。どんな稽古になるかはわかりませんが、だんだんと我々の緊張もほぐれてまいりましたので、しばらくの自習期間を経たうえで、もう少し進歩した台詞を言えるようにしたいものです!

                   ☆

さて、五月公演もあと一週間。そろそろ来月の準備もはじめなくてはなりません。師匠三年ぶりの『二人夕霧』は使う小道具が多かったり早拵えがあったり、歌舞伎座初上演の『昇龍哀別瀬戸内 藤戸』などは全くの未見ですので想像もつかず。月末はバタバタすることと思いますが、いつもと変わらず、楽しみながら仕事をできるよう、今から心の準備をしておきましょう!