梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

みんな頑張ってます!

2006年05月02日 | 芝居
今日はどの芝居も順調に進行し、ほぼ時間表通りの終演となりました。

今月の私は、師匠の用事を何もしておりません。と申しますのは、『外郎売』では師匠が登場するだいぶ前から舞台にいるわけですし、『黒手組曲輪達引』では、出番こそ師匠の出る一つ後の場面なのですが、衣裳さん、床山さんのご都合で、師匠がお出になる前にこちらはすっかり扮装をしなくてはならず、まさか遊女の格好をしておか持ちを持つわけにもゆきませんので、師匠の二役の用事は、兄弟子がた、弟弟子、付き人さんがすっかりなすって下さっており、大変申し訳なく思うとともに、少なからず淋しい気持ちを味わっております。しかも師匠のお帰りは私が舞台に出ている間なので、私はお見送りもできず。朝のお迎えと、師匠が『黒手組曲輪達引』での出番を終え、楽屋に戻っていらっしゃった時に、一足早く「お疲れさまでした」とご挨拶申し上げる、このふた時だけが、今月の師匠と過ごす時間なわけで、なんともかんとも…。

さて話は変わりますが、今月の歌舞伎座では、第十八期歌舞伎俳優研修生の六人が、<舞台実習>として舞台に出演しております。夜の部『傾城反魂香』に<百姓>役で四人、『黒手組曲輪達引』の大詰めの立ち回りに二人、それぞれ先輩方に混じって勉強しておりますが、以前申し上げましたように、彼らの期から、研修期間が三年間に延長され、その三年目となる本年度は、今月から数ヶ月は、本興行の舞台に立ち、より実践的な経験を積むと同時に、楽屋での行儀、歌舞伎界のしきたりを学ぶということになったそうです。
今まで土日祝日がお休みで、六時には帰れた彼らが、いきなり二十五日間休みなしの生活になる。しかも名題下部屋で大勢の先輩に囲まれながら半日を過ごすということで、緊張もするでしょうし、まだこの世界を知らぬが故の失敗もするでしょうが、卒業の前に、こういう経験をできるということはとても意義があることだと思います。先輩達の舞台姿を直に目にすれば、これからの授業での心構えも自ずと変わってくるでしょう。わからないことがあれば、先輩達にどんどん質問をしてほしいと思いますし、もちろん我々養成所の卒業生としても、おせっかいにならない程度に、知っていることは教えてゆきたいと思っております。
私達十四期生は、こういう卒業前の<舞台実習>はなかったので、実感はわかないのですが、どうせ遅かれ早かれ、びしばししごかれる時はくるのですから、早いにこしたことはございませんね。

写真は今月の私の化粧前、女形をしておりますので、細々とした道具が並んでちょっとゴチャゴチャしてますね。…オヤ? 鏡に映る、化粧中の人は誰? 新居のパーティーにも来てくれた、私の大事な友人です。