かいけー君のぼやき

食って飲んで、愚痴ってぼやいて、また明日

博士の愛した数式 / 小川洋子

2007-05-03 18:11:35 | 読書

母子家庭で育った私は、母の期待とは裏腹に高校3年生で妊娠出産し、今は家政婦として働きながら10歳になる子供と暮らしている。
そんな私が派遣された家は、かつての交通事故以来、記憶が80分しかもたないという数学者、博士の家であった。
何より数学の美しさに魅せられた博士は、私の子供をルートと名付け、学校帰りのルートと共に3人の不思議な生活が始まる。
私と2人でいるときには全てにおいて無頓着であるにも関わらず、ルートがいる時には別人のようにしっかりとした人間になり、そして無条件の愛をルートに注ぐ。
毎日初対面として始まり、なのに繰り返される日常が、その博士のもつ記憶が80分という時間を切ったときに変化が起こり、、、


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とても心温まる素晴らしい1冊でした。
純粋で、そして何より数学に魅せられた博士。子供に対しては無上の愛を注ぎ、絶対のものとして守ろうとする博士。
記憶が80分しか持たない。それは毎日が初対面から始まることを意味する。
にも関わらずルートという絶対のものと数学をキーに繰り返される日常。


数学って、、、文学になるんだ、、、そう思いました。
80分という区切りが崩れた時、当たり前と思われる日常も変化を迎える。
博士の義姉の放つ言葉
「あなたを覚えることは一生できません。けれど私のことは、一生忘れません。」
が痛かった。
大きく成長するルート。
しかしその愛し、愛される関係は80分という区切りすら壊れても変わらない。
感動しました。とても温かい、いい気持ちになれました。


勝手に評価 ☆5.0/5.0


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