<鬼面資料>
輪島市名舟に伝わる「御陣乗太鼓」という郷土芸能は、
戦国時代に能登平定を試みた上杉謙信の軍を追い払う、
名舟の村人の姿を表現したものだと言われております。
何でも、多数の兵を連れ村へと押し寄せた上杉軍に対し、
村人たちは古老からの指示に従い、
各々奇怪な面をつけ太鼓を打ち鳴らしながら、
兵士たちの就寝中を狙い奇襲をかけたのだとか。
この世のものとは思えない妖怪の出現に驚いた上杉軍は、
戦わずして退散を余儀なくされたという話です。
「御陣乗太鼓」を見ながら感じたのは、古代の能登人は、
鉾や槍などの「武器」を持って争うのではなく、
ある種の「祭祀」や「呪術」を拠り所に、
「敵」と対峙していたのではないかということでした。
気多大社の「鵜祭」において、
神に差し出した「鵜」を殺さず海に放つように、
また真脇でイルカ漁をしていた人々が、
食したイルカの魂を丁重に海に送り返したように、
自分たちとは相容れない価値観をより分け、
最後まで「縄文の精神」を守ろうとしていたのかもしれません。