<重蔵神社 じゅうぞうじんじゃ>
面様年頭が行われる輪島の重蔵神社には、
如月祭(きさらぎさい)と呼ばれる
特殊神事が伝えられていました。
聞くところによりますとこの神事は、
「神に生贄として人身御供をした名残」だそうで、
47~48歳の男性が「当元宿」に籠り、
一週間にわたり数多くの神事を行いながら、
前年の当組から引き継いだ
「お当神様」を奉斎するのだとか。
最終日の午前0時に行われる献備(けんび)式では、
黒紋付の氏子たちが口元を白紙の三角マスクで覆い、
御供米(人肉)入れたを船形唐びつを、
荒縄で十字に縛って、海藻(女人の髪)、
酒(人血)、餅(髪飾り)などで飾り付け、
神社に運び神前に供えると一目散に逃げ帰るという、
何ともいわくありげな秘儀を執り行うと言います。
実は、能登半島に伝わる祭りの中には、
「生け贄」を示すような内容が散見され、
人身御供を彷彿させる伝承などが
各地域に残っているのです。もしかすると、
古代の能登の人々は、すべての「異物」を
やみくもに受け入れてきたわけではなく、
いかにして理不尽な運命を避けるかを考えながら、
祭祀のあり方を模索していたのかもしれません。