すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第131号 「グレン グールド」アメリカデビュー50周年

2005-01-03 16:28:18 | Washington Report
【Washington】ホワイトハウスから北に向かって歩くこと約20分、若者に人気の繁華街のはずれの住宅街の中にフィリップス コレクションという小さい美術館がある。その名の通り、昔フィリップスさんという人が集めたフランス印象派を中心とした絵を世の人々と分かち合うために、フィリップスさんが亡くなった後に家族が家をそのまま美術館にしたものである。蒐集品をすべて飾れるよう、10年近く前に日本人のお金持ちの寄付で拡大され、今は隣に建った現代的な建物と二階のわたり廊下でつながっている。

この美術館は9月から5月までの間、毎週日曜日の夕方、まだ有名になっていない有望若手音楽家の無料コンサートを何十年と続けている。美術館が拡大される前は美術館への入場料もいらず、よそのお宅に好きな絵を見せて頂きに行ってる感じがとてもよく、ワシントンに来ていっときは、貧乏学生で有料コンサートなど夢のまた夢だった私は、コンサートを聴きがてら日曜日によく通った。

そのフィリップスコレクションがグレン グールドのアメリカデビューの舞台だったと知ったのはずーっと後になってからである。ちなみにソプラノのジェシー ノーマンも無名時代にここで歌っている。

カナダではとうに有名になっていたグールドがこの美術館でアメリカデビューを飾ったのが1955年のお正月。その翌日のワシントンポスト紙には、「...こんなピアニストは今迄にない。世界がグールドを聴く日は遠くない...」と手放しの評が載った。

その一週間後に今度はニューヨークで自前でホールを借りてコンサートを開いた。観客は多くなかったけれど、ワシントンでのコンサートの噂をききつけた既に世界に名を馳せていた音楽家やレコード会社の人達が会場にはいた。最初の数小節を聴いただけで当時のCBSレコードが契約を結んだ話はあまりにも有名だ。

私はグールドが50歳を過ぎたばかりで亡くなったことは日本を出る少し前に知っていたけれど、死後カルト的に世界中で人気が増していったことは全く知らなかった。知らなくて良かった。知っていたら天の邪鬼の私はグールドについて、好きで真似をして弾いては先生に怒られていたバッハの演奏以外知らないままだっただろうから。

1993年、たまたま引っ越しセールをしていたレコード屋でグールドの没10周年記念のビデオが安かったので一つ買ってみた。そのビデオから私のグールド研究、ひいては音楽の勉強やり直しが始まった。

今日、グールドを偲ぼうとフィリップス コレクションに行ったが、残念ながら今はお正月はコンサートシリースは休んでるとのこと。そこで家に帰り、50年前のプログラムをできるだけ再現してみた。いつもと違う順序でグールドの演奏を聴くのは面白かった。

 グールド様、ありがとうございます。あなたのお陰で私の音楽のみならずものごとを見る目は広く、深くなりました。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第130号 A HAPPY? NEW YEAR! | トップ | 第132号 「あきつしま」の遠... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Washington Report」カテゴリの最新記事