すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第20号 「華氏911」

2004-08-23 18:35:52 | Tokyo-k Report
 話題の映画「華氏911」を観た。面白かったが気分は醒めた。「よくこんな映像を見つけ出してきたなあ」と感心させられる一方で、主張に対する検証・反論がないから醒めてしまうのである。映画館は通常よりはるかに混んでいた。こういう映画を見ようという人がたくさんいることは結構なことだが、これを観て「感動しました」と涙を流すようではむしろ危険である。

 同時多発テロ勃発時に、随行員から耳打ちされたブッシュ大統領の表情は、興味深かった。瞬時の判断力と行動力のない人物であることを巧みに印象付けたが、その7分間、映像をカットせずに、画面半分に同時刻のニューヨークの現場を映し出しながらずっと流し続けて欲しかった。

 カメラに映ることを本能的に喜ぶ政治家の真理を巧みに利用して、議員たちへの突撃インタビューが面白かった。もっと多くの例を映したら、それだけでも1本の映画になっただろう。出番を前にクシを舐めて髪を解かす国防庁次長は、気味が悪かった。ゴリゴリのネオコンと言われるこの人物の異常性を、巧みに浮き彫りにしていた。

 映像は、そうした異常性を強烈に印象付けるから、むしろ危険なのである。その裏づけ、反論がないと、単なるプロパガンダに陥る。極論すれば、「華氏911」と「ナチスの宣伝映画」との違いはほとんどないということになる。まあ、ブッシュのアホさ加減と、エスタブリッシュメントと呼ばれる層の醜さを感じ取れば、それで十分なのではないかな。

 「戦争悪」「国家悪」を訴えることでは価値ある作品と言えるが、プロパガンダに酔いやすい人は、心を強くして観た方がいい。

                            
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