すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第460号 「ラジオ深夜便」(2)

2007-02-15 00:04:07 | Mie Report
【Mie】先月の「ナイトエッセイ」では、近代史家による「見聞録から見た幕末の日本」というテーマの話があった。それは幕末の日本を訪れた外国人から見た当時の庶民の暮らしや印象を述べたものだ。

それによると、当時の庶民は男女を問わずいつも機嫌が良く、ニコニコしていたという。また女性は人懐っこく、外国人を見るとすぐに寄ってきたそうだ。これが中国の女性だと、外国人を見るとすぐ逃げ出したり隠れたりしたという。

当時のヨーロッパは政情不安で、内戦や他国との戦争により市民生活が厳しかったため、庶民の顔つきも笑顔よりは不安顔やしかめ面が多かったのだろう。そこから日本を訪れた外国人にとって、日本の庶民が見せる笑顔や人懐っこさは、日本をパラダイスのように感じたのかもしれない。

また子供はいろんな年代の子と一緒に生活して、年長の子が幼い子をおぶったりしていたそうだ。今の子供は家庭で兄弟や姉妹と生活する以外に、いろんな年代の子と触れ合う機会がほとんど無いため、年長の子を慕ったり年少の子の面倒を見る機会が少ない。

つまり子供同士の関係が当時より希薄で、弱いものへの優しさや思いやり、年長者への敬愛の気持が育ちにくいのかもしれない。まして近年は兄弟姉妹が少なく、一人っ子や二人兄弟(姉妹)の多い少子化現象がその傾向に拍車をかけているように思う。

また外国人が驚いたことは、当時の庶民は男がふんどし一丁、女が上半身裸のような姿でも互いにそれほど違和感なく生活していたということだ。そういえば当時は今と違って混浴が多かったかもしれない。現在でも地方の温泉宿の露天風呂には混浴のところがある。

このことは外国人には信じられない光景だったようで、「日本人は性の意識が希薄なのだろうか?」または「日本人そのものが、性に関しておおらかな国民性なのだろうか?」という疑念を抱かせたそうだ。

外国では男女が公然と肌を露出することなどほとんどなく、仮に女性がそんなことをしたらすぐに襲われたりする危険があったのだろう。そんな国から来た外国人の目には、混浴など全く信じられないことだったに違いない。

私はこの話を聞いて、当時の庶民の暮らしを再認識した。今までは幕末とはいえ封建社会であったから、庶民の暮らしはそれなりに厳しく、ふだんニコニコと笑顔を振りまくなんてことはあまり無かったと思っていた。

しかし実際はそうではなく、庶民はニコニコと機嫌が良く幸せそうで、外国人の目には平和なパラダイスのように映ったのだ。これを今と較べたらどうだろう。

文明がこんなにも発達し、生活が便利で豊かになったというのに、世間では親子・兄弟間の血なまぐさい事件や子供のいじめ自殺問題などが後を絶たない。そして現代の庶民は、果たしていつもニコニコと機嫌が良く、人懐っこいだろうか?

そう考えると、人の幸せや満足感は文明の発達や時代背景とはあまり関係が無く、むしろ今よりも当時の庶民の方が、より幸福感に満ちていたのではないか、という気がしてくる。外国人の目を通して、当時の庶民の生活と心情が透けて見えるようだ。

(写真=伊豆・下田の「ペリー艦隊上陸地」にあるペリーの碑)
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