すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第1081号 「知識が人格を破壊する」

2012-07-03 16:01:41 | Mie Report
【Mie】以前、NHK「日曜美術館」で彫刻家・佐藤忠良の特集があり、その中で娘の女優・佐藤オリエが父について語った言葉が印象に残っている。その言葉とは、「知識が人格を破壊する」というもの。

オリエさんによると「父はいつも大工や左官、農民などいわゆる“普通の人”が世の中で一番偉い」と言っていたそうだ。社会的地位の高い人や大学教授など学問や知識が豊富な人は、えてしてその「知識が人格を破壊する」という。

つまり、そういう人より教養に乏しい“普通の人”の方が、人柄の優れた人が多いということか。分かりやすく言えば、世間で偉いといわれる社会的地位の高い人は教養やプライド、メンツが邪魔をするため、“普通の人”の庶民の方がより“人間味豊か”で人格が損なわれないということだろう。



そういえば、今放映中のNHK朝ドラ「梅ちゃん先生」に出てくる梅子の父親がまさにそれ。医者で大学教授の父親は、謹厳実直、頑固一徹、融通が利かない、意地っ張り、プライドが高くメンツにこだわる人物で、「知識が人格を破壊する」まさに典型的な人物像。

昔は確かにこのような人が多かったに違いない。世間的には社会的地位が高く尊敬される人物だが、あまりに堅物で人間味に乏しく、人格的に魅力がない。それよりも、隣に住む鉄工所の親父(片岡鶴太郎)や飲んだくれの町医者・坂田先生の方が、はるかに人間味豊かで魅力的だ。

4月から始まったこの朝ドラ。つい最近まで、内容は上品だがあまり面白くないと思って観ていた。この前の朝ドラ「カーネーション」があまりに強烈でドラマチックだったので、その反動かもしれない。しかし、ここへきて次第に面白くなってきた。登場人物の個性がよく描かれている。

(佐藤忠良「早蕨」=東京都庁・都民広場)

佐藤忠良氏は、「群馬の人」や一連の「帽子」シリーズ、「若い女」シリーズに観られるように、ごく普通の「ただそこに自然にいる人間の姿」を彫り続けた。そして自らを「生涯一粘土職人」と呼び、文化功労賞などあらゆる賞を辞退したという。

『「芸術とは本来“ふつう”のもので、愛情と同じように特別の存在ではない」と、愚直に、無名の人々の姿を彫り続けた(「日曜美術館」の紹介記事より)』氏は、自分もまた特別の存在ではない“普通の人”を貫いたのだろう。人間の本質を見極める、飾り気のない人だったに違いない。

そういえば私は、三重県立美術館の設立後まだ間もない頃だから30年近く前になるが、そこで開催された氏の講演会を聴きに行ったことがある。内容はあらかた忘れてしまったが、その頃すでに70代だったであろう氏はとても元気そうで、かくしゃくとしておられたのを覚えている。

(冒頭写真は釧路・幣舞橋の佐藤忠良作品「道東の四季《夏》」2010.9.19撮影)

(以下は編集部による釧路「幣舞橋」界隈近影=2012.7.2.撮影)








コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第1080号 健康寿命 | トップ | 第1082号 北海道ラベンダー... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Mie Report」カテゴリの最新記事