《コマクサ》(平成27年7月7日、岩手山)
「私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露―」 五 おわりに
さてここまで、未完に終わった上田哲の論文「「宮沢賢治伝」の再検証㈡―〈悪女〉にされた高瀬露―」を基に、そしてそれに幾ばくか補完させて貰いながら、主に「仮説検証型研究」という、オーソドックスな研究手法に依って〈悪女・高瀬露〉を再検証をしてきた。
その結果、〈高瀬露悪女伝説〉は単なる虚構であり、〈高瀬露は悪女とは言えない〉がその「真実」だということを検証できた。
よって、上田の遺志によって命じられたと私自身は認識している課題の半分には、ある程度応えることができたものと安堵している。ただし、まだ半分が残っている。
というのは、露は〈悪女〉の濡れ衣を着せ続けられてきたということが少なくとも否定できないことがこれで明らかになったので、〈悪女・高瀬露〉はもはや人権問題となってしまった。しかも、〈高瀬露悪女伝説〉は全国に流布しているから、当然これをこの世から葬り去り、貶められた高瀬露の人格や傷つけられた尊厳を回復せねばならない、という残り半分の課題がである。
そしてそれは、露一人のためだけでなく賢治のためにも、である。というのは、生前賢治が、血縁以外の女性の中で一番世話になったのが露からであるのだが、その露がとんでもない〈悪女〉にされているという実態があるので、このままでは、賢治はいわば「恩を仇で返した」ということになり、「歴史」から誹られる虞があるからだ。
とはいえ、残念ながら個人的な取り組みではこの課題の解決は殆どどうにもならない。がしかし、かなり確実に解決できる方途があることに気付く。それは、宮沢賢治学会が〈高瀬露悪女伝説〉を再検証してみたところ、露は悪女とは言えないということであったならば、そのことを公的に宣言することによってである。同時に、もしそうなったとすれば、賢治が誹られる虞もなくなる。そしてもちろん、露の濡れ衣は一気に晴れるし、露の名誉と尊厳もかなり取り戻せる。
畢竟するに、時代は変わってしまったのだ。昔ならいざ知らず、今の時代は何にもまして人権が優先される時代だから、もはや人権問題となってしまった〈悪女・高瀬露〉の解決は喫緊の重要課題である。となれば、私たちがこのことを見て見ぬ振りしていることを時代はもう許さないのではなかろうか。そしてまた、いつまでも等閑視していていいのかと、賢治から私たちは今問われているのではなかろうか。
そう思って、私はこの論考「私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露―」を公にし、さらに、『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』を出版し、その後、『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』を出版してきた。それはなかなか険しい道だが、知ってしまった「真実」に目を背けることは私には出来ないから、おかしいことはおかしいとこれからも粘り強く学界等に訴え続けてゆきたい。特に、人権問題がらみのこととか、小中学校の教育を通じて嘘かも知れない賢治を純真な子どもたちをに教えていることは許されないのだと。
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来る6月9日(日)、下掲のような「五感で楽しむ光太郎ライフ」を開催しますのでご案内いたします。
2024年6月9日(日) 10:30 ▶ 13:30
なはん プラザ COMZホール
主催 太田地区振興会
共催 高村光太郎連翹忌運営委員会
やつかのもり LCC
参加費 1500円(税込)
締め切り 5月27日(月)
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