鈴木すみよしブログ

身近な県政にするために。

マウントレーニア国立公園視察

2019年11月12日 | 議会活動

 

令和元年11月12日(火)

 

 シアトルから車で2時間半ほどのところにある、マウントレーニア国立公園を視察し、観光客が車で訪れることができる最高地点のパラダイスビジターセンターにて、ビジター機能やレストラン、宿泊機能の稼働状況や稼働についてと、その後は、博物館と原生林などが広がる原生地地域インフォーメーションセンターとして機能している国立公園局の管理棟などを視察し、保護の課題などについて、国立公園局広報官のマーク  ブラックバーン氏から説明を受けました。

(麓の扇状地には湿原と自然林が広がる)


(ビーバーがかじった跡)


(レーニア山を背景にマーク氏と)


(ビジターセンターの入り口)


(ビジターセンターは地域材で作られている。展示もユニーク)


 

 レーニア山は標高4,392mのアメリカ北西部にあるカスケード山脈の最高峰であり、1800年代後半に噴火した活火山でもあります。アメリカでは5番目の1899年に設立された国立公園で、アメリカ最大の氷河に覆われ、その数は48にも上ります。アメリカ全体はヨーロッパからの移民が多く占めていますが、元々は何千年もの間、原住民にとって大変重要な場所でもあります。

 マウントレーニア国立公園には年間200万人の観光客が訪れ、森林限界にある標高1,650mには、パラダイスと呼ばれる場所があり、ここにヘンリーM.ジャクソンビジターセンターがあります。ここには、レーニア山を訪れる人たちが、トレイルをハイキングするときに重要な情報が発信される展示施設として機能しています。例えば、生息する生物の生態系や、地質学的な情報展示などがあり、自然環境的に厳しいこの地域を実際に登山や歩かなくても、それと同様な体験や情報が得られる施設でもあります。館内にある約20分の映像シアターでは、訪れた観光客の多くは実体験することは少なく、体験しようとしてきても悪天候のために断念することもあり得るので、この映像を通じて全体を感じ取っていただくことを目的として導入したと説明がありました。

 

 以下、マーク氏の説明や質疑のやりとりについて触れてみたいと思います。

(マーク氏への質問の様子)


(ジオラマを使って説明)


 登山道の安全設備について、国立公園内は、レーニア山へのバスのような大型車も利用できる登山道ですが、急峻な山間で、年代ものの木々が育つ自然の森林や、渓谷を縫って設けられています。日本では、危険箇所にはガードレールが設置されていますが、ここではガードレールは全く設置されず、特に危険な場所には近くで採取した石などを使った防護壁が作られ、そこの場所で得られた材料で対応することにより、自然景観を重視しています。

 レーニア山への登山道は何本もありますが、通年で、冬も利用できるルートは一カ所しかありません。降雪時には大量に降ることもあり、除雪する場所を絞り込み、可能な限り通行ができるようにしています。

 現在の大きな課題は、自家用車やバスでの利用が可能となったことで、繁忙期の5月から9月までは駐車場が足りなく、1980年代頃までは、駐車場を確保し、多くの観光客が訪れるように配慮してきましたが、その取り組みでは需要に追いつけることができず、今では駐車場の確保をやめ、自然保護の重視の観点から、上の駐車場が空くまで、麓で待機していただくとしています。

 

 国立公園への入山料(入園料と、レーニア山への登山料50ドル)は、各登山道にゲートを設け、全員から、あるいは車種ごとにもうけた通行料を例外なく徴収しているとのことでした。富士山の入山料が任意であるに対して、ここでは強制となっていますが、その理由として、自然を守ることや利用者の安全確保の対策には多くの費用がかかることであり、これを曖昧にしてしまうと、長い間に保全などの役割と責任を果たすことが困難となるとしてこの方式を導入しているとのことです。

 入山料の徴収額は年間、約6億円強で、その60%がメンテナンス費用として、20%が人件費(常勤120人、繁忙期には臨時を増員し300人)などとなっています。国からの補助金もありますから、総額支出はかなりあるものと思われます。

 それでも、財源は不足気味で、国の所管する部署からは、多くの入山者が集まる夏には入山料を上げ、冬には下げるといった対応を検討したらどうかという提案もあったようですが、「国立公園は国民全体のものであり平等に利用できる場所」の観点から、投資的な商業的であるべきではないとして、断ったというエピソードを聞きました。

 国は財政負担が増えるのを懸念し、助成金は減少傾向といいます。そこで、10年ほど前から、国が決めた使用方法にとらわれず、国立公園局ごとに、優先順序を決め自由な使い方ができるようになり、工夫を凝らし、支出の削減にも取り組んでいるとのことでした。

 

 気候変動とレーニア山の環境変化については、48ある氷河のうち、22から23の氷河の縮小が見られるようになりました。生態系も変化もあるようで、正直なところ、温暖化の影響があると感じている。その事象を訪問者にも感じていただき、一人一人ができる取り組みを考えてほしいと述べていました。

 

 火山噴火防災については、1800年代後半の土石流(火砕流)被害の経験もあり、かなり広い範囲が影響を受けた。現在、ハザードマップを作成し、関係地域の住民と共有し、避難などについて話し合うとともに、避難訓練なども実施している。レーニア山には各地にセンサーを取り付け、異常の検知とともにサイレンを鳴らすことにもなっている。可能な限りの対策をこれからも講じていくつもりだが、火山噴火を止めることはできないので、迅速な避難と安全な避難場所、方法の確保が重要であると述べていました。

 

 今回の視察では、世界遺産富士山の観光振興と環境保全、火山噴火防災対策に、多くの参考となる情報を得ることができました。アメリカにはレンジャーという立場で国立公園の運営や監視などに関わる専属の組織があります。富士山の場合は、専属の組織はなく、強い権限もありません。国が主導し、国民の大切な財産である国立公園の保全について、新たな取り組みを検討していく必要があると感じました。

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