鈴木すみよしブログ

身近な県政にするために。

ポートランド州立大学のまちづくり人材教育

2019年11月13日 | 議会活動

令和元年11月13日(水)

 

 全米で最も住みやすいまちと言われるポートランド市を支える、ポートランド州立大学のまちづくり人材教育について視察をしました。

(ポートランド州立大学構内)


(ポートランド州立大学パブリックサービス実践・研究センターがはいる建物)


(大学のポリシーは、「知識をまちのために捧げよう」)

 

 講師はポートランド州立大学教授で、ハットフィールド大学院行政学部教授、パブリックサービス実践・研究センターの副所長を務める西芝雅美先生と、同センターの国際マネージャー兼ファーストストップポートランドのディレクターである飯迫八千代先生が務められました。また、オレゴン州登録建築家でポートランド州立大学において建築学の非常勤講師を務める柳沢恭行氏が、ポートランド市内の都市計画と建築物のワークショップの講師を務めていただきました。

(講師を務めた西芝先生)


(飯迫先生による講演前のガイダンス)


 さらに、ポートランド市振興局の製造業担当ジャパンイニシャチブ担当のケビン・ジョンソン氏による、ポートランド市の経済振興の取り組みと課題、日本との経済交流について意見交換を行いました。講師を務めた日本人の先生方が、後から触れる世界で最も注目の集まるまちで、その分野の研究に取り組み、それが女性であることに改めて驚かされました。

(経済振興について意見交換した振興局の建物)


(講師を務めた、ケイン・ジョンソン氏)

 

 ポートランド市には、インテルをはじめ、ナイキやアディダスなどのスポーツ用品メーカー、大手自動車メーカーなどの本社や拠点工場があり、全米でも経済発展が最も進んでいる街です。2001年以降のGDPの伸び率は4.4%であり、人口は毎週400人ずつ増加しています。また、2030年までの移住者数は100万人と想定しています。大学の学位を持つ人の大人人口における割合は33%で、特に24歳から35歳までの年齢層に人気があります。次に多いのは55歳から65歳の年齢層で、「若者が引退しに行くまち」、WHOに認められた「高齢者が住みやすい都市計画」として認定されています。

 そのほか、全米で最も住みやすいまち、環境に最も優しいまち、最もクリエイティブなまち、最も出産に適したまち、消費税ゼロのまちなど、アメリカ国内もちろんのこと、世界から注目されているまちでもあります。これらを総称して、最も変わり者でありたいまちと標榜しています。

 ポートランド市には「まち」を育てる担い手がいることをテーマとし、ブログのタイトルに書いたように、それを実践していくための人材育成について学びました。

 

 ポートランドが全米で最も住みやすいまちになった理由は、4つあります。一つ目は、住民運動による住民主体のまちづくりの実践。二つ目は、ボランティア活動の活性化。三つ目は、ネイバーフッド・アソシエーション活動。四つ目は、話し合いの場を作る行政です。

 

 住民運動とは、住民による“自分たちの住みたいまち”の主張。成功の積み重ねによる“やればできる”の信念。これらをプロジェクトとして取り組むことが重要としています。その具体例が、国の高速道路の建設に反対し、その交通補助金を活用した住民にとってより身近な日常生活に必要な公共交通の整備で、市内至る所に張り巡らされている路面電車網やバスなどを確保しました。

 ボランティア活動は、その活動を通じた住みたいまちづくりやサービス奉仕活動以外のNPO活動、行政の市民アドバイザーグループ活動等のボランティア活動の実践を行うこと。

 ネイバーフッド・アソシエーション活動は、地縁ベースの住民参加のメカニズムの実践で、日本の町内活動に似ているようですが、その内容を比較をすると明らかに違いがわかります。特徴的なのは、市から年額3,000~5,000ドルの活動予算が支払われ、広報誌の発行のほか、様々な支援が受けられます。活動内容には、地域の土地利用計画・都市計画の策定、市の予算編成への参加、歴史的建築物の保存活動、低所得者向け住宅の開発・提供の提案など、行政機能の一部や議会機能も担っています。住民が作るポートランド市の未来構想などは、通常、行政が策定する総合計画まで踏み込んで参加するとしています。

 話し合いの場を効果的にするためには、行政と住民のパートナーシップや、計画段階からの住民参加、信頼性の構築、包摂性と公正性、質の高いプロセスの選択、透明性、アカウンタビリティなどを明確にし、市民諮問委員会が評価指標を導入し、その成果を具体的にチェックしていく仕組みなどの説明がありました。

 

 行政職員にも求められるスキルがあり、聴く姿勢、ファシリテーション力、市民活動の経験・理解などをあげています。

 

 まちづくりの「氷山モデル」として、水面出でている一部の目に見えるもの(都市計画、景観デザイン、組織形態など)、その多くは水面下で目に見えないもの(人の意識・力量、価値観、プロセス、考え方、文化的背景など)をしっかりと見据えていくことが重要といいます。氷山が安定して浮いているように、水面下が充実していなければ、ひっくり返ってしまうということなのでしょうか。

 

 これらを学問として取り扱い、ポートランド市で実践されているもの、あるいはここを実験フィールドとして得たものなどを元に、「まちづくり人材育成プログラム」が作られ、日本の財団の後押しで、多くの日本の自治体関係者やまちづくりに参画する人たちが学んできたといいます。

 私の地元富士市からも、これまでに3人がここに来て学んだといいます。その成果がどう現れているか、改めて検証したい興味あるものでした。

 

 私たちもそれなりに住民参加によるまちづくりを実践していますが、今回の視察を通じて、いろいろ考えさせられるものが多く、これからの議員活動に活かしていきたいと思います。

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