“赤い蘇鉄の実も熟れる頃…”は、バタやんこと田端義夫が歌った“島育ち”の一節です。その赤い種子が実っています。晩秋熟れる朱赤色の扁平な種子は、幹とともにデンプンを含みますが、有毒で、南西諸島では飢饉のとき、これを砕き水にさらして毒を除き、非常食としたと伝わります。
ソテツ:蘇鉄(ソテツ科ソテツ属)は、九州南部、琉球の海岸の崖や急斜面などに生え、また観賞用として庭に植えられる常緑低木です。
雌雄異株で、雄花は幹の先に直立し、雌花は球状で胚珠は裸出します。
裸子植物に属し、進化的に見て、シダ植物と被子植物との中間に位置する古い植物で、生きた化石ともいわれ、イチョウとともに種子植物の中で精子を形成する珍しい植物でもあります。そして相前後してイチョウとソテツが精子で繁殖することを発見したのが、いずれも平瀬作五郎、池野成一郎という日本の研究者であったことも有名な話です。
蘇鉄の名は、枯れそうになったとき、鉄釘をさすと蘇生するといわれることによります。
何かと話題の多い蘇鉄ですが、蛇足をひとつ。この写真は、高槻市内上牧の本澄寺の境内で撮影したもので、この寺の四十一世三好竜神の兄が、大阪が生んだ詩人三好達治であり、境内には三好達治記念館が建ち、一隅には達治の墓もあります。