思惟石

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『ハプスブルク家の女たち』恋愛や家庭から見る歴史、おもしろい

2022-09-20 12:25:06 | 日記
『ハプスブルク家の女たち』
江村洋

講談社現代新書から1993年に出版された本。
なので、ちょっと女性観が古いかな?
という箇所もあるけれど、
総じておもしろい一冊です。

ハプスブルク家の女性を描くということなので、
婚姻や恋愛や家族模様のエピソードが多く、
そこらへんも新鮮。

まだ貧乏な辺境領主だったころの神聖ローマ皇帝
フリードリヒ3世に嫁いだエレオノーレのがっかり感に同情し
(皇帝みずから畑を耕しておられる…)、
その息子でハンサムなマクシミリアンに惚れ込んだ
ブルゴーニュ(当時豊かな公国だった)突進公と
娘マリアがもたらす幸せな結婚生活に、
御伽噺みたいだな!と感心したり。

ちなみにマクシミリアンの子供男女が、
スペイン王家の男女と二重結婚したのが
「幸いなるオーストリアよ、汝は結婚せよ」の始まり。

マリア・テレジアの孫で
オーストリア帝国最初の皇帝(同時に神聖ローマ帝国最後の皇帝)
フランツ1世に対しては、
弟たちは有能なのに長男だけ無能という扱いなんですが
(弟は軍事の才があったカール大公と「アルプス王」ヨーハン大公)。
作者、厳しすぎやしないか、と、読んでる私がハラハラしました笑
だって、ナポレオン超強いしめっちゃ攻めてくるし、
プロイセンも改革してるし、大変じゃん!

娘のマリー・テレーズをナポレオンに嫁がせたことにも厳しい。
だってメッテルニヒ、超怖いじゃん!!

それよりもなによりも、
ブラジルに嫁いだ妹のレオポルディーネの話は
初耳でおもしろかった。
ポルトガル植民地だったブラジルの統治をしたポルトガルの
ブラガンサ王家ドン・ペドロに嫁ぎ、ブラジル皇后に。
ブラジルは1899年に共和制になるまで、王国だったらしい。
知らんかった〜勉強になる!

あ、フランツ1世の息子のお嫁さんゾフィにも厳しいですね。
そんな野心たくましいゾフィの息子が、
ほぼ最後の皇帝フランツ・ヨーゼフ。
そして次男はメキシコ皇帝として現地で処刑されてしまうマクシミリアン。
(中野京子さんがマネ「マクシミリアンの処刑」に厳しいこと言う(笑)のは
 『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』
フランツ・ヨーゼフの嫁は放浪の美人皇后エリーザベト(シシィ)。

この本、第3章がいきなり貴賎結婚の話(しかも時代も飛ぶ)で、
唐突感があったのですが、この前振りが、
ハプスブルク家のラストに繋がってるんですね。

フランツ・ヨーゼフ帝に祝福されなかった
皇太子フランツ・フェルディナントとゾフィ・ドロテアの貴賎結婚と、
最後の最後の皇帝カール1世と良家出身のツィタの結婚の温度差。
(その一方で国民感情は乖離してるけど)
なるほど〜、と。

婚姻や恋愛や家族模様から見るハプスブルク家、
ドラマチックでおもしろかった。
(たまに仲睦まじいおしどり夫婦がいて、
 イギリスやフランスにはない安心感もあった笑)
コメント
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