思惟石

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エマニュエル・ボーヴ『ぼくのともだち』

2018-01-11 15:36:07 | 日記
1920年代のフランスに生きる
ザ・ダメ男ヴィクトール・バトンくんの
おともだち探しの手記です。

第一次世界大戦で負傷し、
その軍人年金だけでのんべんだらりと
パリの安アパートで暮らしています。

訳者あとがきによると、
バトンくんが住んでいるエリアは郊外のようで
「ともだち」に出会うため毎日
一時間近くかけて中心街までお散歩している様子。

それでいて友達候補に対して
冷静というよりも穿った視点で酷評したり
(紳士なので心の中だけでね)
彼らの恋人や娘にちょっかいかけようとしたり。

ホント、ダメ男だなあ…。

しかしですね、なんだか妙なリアリティがあって、
出版当時は主人公=作者だと思われていたようです。
人間的本質は不明ですが、執筆当時の作者は既婚で子持ちで
もちろん働いてたわけで、これは純斬たる創作小説。
なのに、妙に他人事と思えない心の機微がてんこ盛りで、
私が男だったら確実に自分の前世だと思うところです。

この本、訳者の渋谷豊氏がフランスで原書に出会い、
出版社に持ち込んだのが邦訳出版のきっかけだそうで。
ありがたや〜。

ちなみにこの訳者、とあるインタビューで
「訳す本すべて”ダメ男小説”」的なこと言われている人。

ダメ男小説というジャンルの定義を聞きたいところですが、
バトンくんのようなダメ男は、ホントずるい。
腹立つし絶対友達になりたくないけど、
だんだん愛しくなっちゃうんだよなあ。
ずるい。

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