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『優しい地獄』

2024-04-11 17:38:20 | 日記
『優しい地獄』
イリナ・グリゴレ

ルーマニア出身の作家による
日本語エッセイ。

そう、邦訳じゃないのよ!
そしてめちゃくちゃ文章が詩的でうまいのよ!!

という褒め方は、作者が望むところではないと思うけれど、
読みながら風景が見える、素敵な文章がたくさんあります。

作者は84年ルーマニア生まれ。
当時のルーマニアは第二次対戦後に社会主義国家となったものの
実情はチャウシェスク独裁政権。
幼少時の国全体や、彼女をとりまく社会環境の閉塞感は
前半の大部分を占めています。

チャウシェスク大統領は1989年に革命で失脚。
クリスマスである12月25日の、裁判からのスピード処刑の様子が
ルーマニアではテレビで何度も放映されたそうで、
このエピソードも、繰り返しエッセイに登場します。

彼女の考え方は私と違う部分が多いと思ったのだけれど、
その違いがどこから来ているのか、
すごく考えさせてくれるエッセイでもありました。

現在は津軽地方に住みながら研究と育児をされているそうで、
後半の近況を綴るエッセイも興味深かった。

遠くて近いようで、近くて遠いような、不思議な人だな、と。

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