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『文学ときどき酒』 丸谷才一対談集

2024-04-12 16:01:45 | 日記
『文学ときどき酒』丸谷才一対談集

1985年初版の丸谷才一対談集。
というわけで、初出は昭和40年〜50年代。
谷崎潤一郎夫人や、里見弴(!)と対談してる〜!!!
教科書に出てくる人やんけ〜!!!
です。

なにはともあれ、丸谷先生はインタビュアーとして
エピソードの引き出し方がうまいし、
相手のコメントを受けての知識の応酬がやばい。

人名やら文学作品やら海外古典やら思想やら、
めっちゃ知識が飛び交うじゃん!
ぜんぜんついて行けないじゃん!!
対談の文字起こし担当者の苦労が偲ばれるぜ!

はい。
以下、メモ。

河盛好蔵(1925−2012)
「小説の中のユーモア」
イギリス文学やシェイクスピアにはユーモアやファニーさがある。
フランス文学にはユーモアはない。あるのはエスプリ。
なるほど。
井伏鱒二はゆったりした文体、ユーモアのある文章。
太宰治はエスプリ。河盛先生曰く「セカセカ、トカトカ」した文体笑
ちなみに、日本でフランス文学が流行ったのは、
訳者がこぞって使っていた岸田國士下訳による『模範仏和大辞典』
(岸田パワーで訳語が豊富)があったから、説。

石川淳(1899−1987)
石川氏の『江戸文学掌気』で丸谷先生は宇和島・山家清兵衛の話を
知ったそうです。
この対談(昭和55年)が『日本の町』に生きている(昭和56年)。

里見弴(1888−1983)
教科書の人!!
対談初出は昭和52年、90歳頃だな。
白樺派でおなじみ、有島武郎・有島生馬の弟。
泉鏡花や正宗白鳥が知人としてサラッと出てくる。
すご〜。
泉鏡花のデビュー作『冠弥左衛門』の原稿料は
お醤油5合瓶1本だそうです。
丸谷先生も「せめて1升」と言う笑

大岡信(1931―2017)
漢詩に出る植物と日本の植物は違うそうです。
「紫陽花」は我々が想像する「アジサイ」ではないとか。
松柏の如し(節操ある人の例え)の「柏」は日本の「カシワ」と違うとか。
和歌の様式美の話しもおもしろかった。
丸谷さんはルールに縛られるの嫌い派ですが、
大岡さんは共通の美意識には一種の教育機能や
感覚を鍛える(もしくは楽しむ)効果があるのでは、という意見。
それ、わかるかも。
「花ならば吉野、紅葉なら龍田」で、
あらし吹く三室の山のもみぢ葉は龍田の川のにしきなりけり(能因法師)
という句がある。
地理的には三室山の紅葉が龍田川に落ちることはありえないけど。
おお、これぞ様式美だ!
あと「松に鶯はとまらない」と藤原為家に叱られた親王の話し、好き。

丸谷さんはインタビュー物は書評に値しないとおっしゃってますが、
個人的には丸谷さんの対話・対談、めちゃ好き。

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