思惟石

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『パチンコ』タイトルに騙されるな!名作だ!!

2022-05-11 16:15:52 | 日記
『パチンコ』
ミン・ジン・リー
池田真紀子:訳

韓国系アメリカ人の作者による、在日韓国人一家の物語です。

私は賭け事が好きじゃないので、タイトルでしばらくの間
スルーしていました。
なので、声を大にして言いたい。
「タイトルに騙されるな!!!名作だ〜っ!!!!」

さてと。
1910年代、日本に併合された朝鮮半島釜山沖の影島(ヨンド)から始まり、
1980年代まで続く4世代の物語です。

世代をまたぐし、ページ数も多いのだけれど、
良い意味でカラッとした文体なので読みやすい。
一気飲みならぬ一気読み。あっという間に読了できました。

貧しい下宿屋の娘ソンジャが生まれるまでがプロローグのようなものかな。
ソンジャが未婚のまま妊婦になり、宣教師と結婚して日本へ。
在日コリアンとしての生活が始まる。

在日1世の悩み、2世の悩み、3世の悩み、それぞれが
多角的に描かれています。
1世のソンジャたちは、WWⅡが終わったと思ったら
朝鮮半島で戦争が起こり、祖国が北朝鮮と韓国に分裂していたという世代。
帰りたくても、南北のどちらに帰るべきなのか。
日本国籍がないまま、祖国が分裂している状態で、
パスポートも取りづらいという。
(北朝鮮はパスポートが取りやすかった反面、日本から渡航できる国は
 北朝鮮だけらしい。なんだそのパスポート)

3世のソロモンは、日本生まれ日本育ちにもかかわらず
日本国籍がない。なんでやねん。
14歳からは「滞在許可証」をお役所に発行して「いただき」に
行かねばならない。なんでやねん!!!

私は疎くて、知らなかったことが多くて、驚いたり憤ったり、
でも共感を抱いたり。
とても興味深く読ませていただいた。いろいろ考えた。

作者はアメリカ育ちの韓国人だけれど、結婚後に4年ほど日本に住み、
在日コリアンの人々に取材をしたらしい。
とはいえアメリカ育ちで、英語で書かれた小説で、
最初は日本の描かれ方がどんなものかと思ったけれど
(ブレードランナー的だったら、それはそれでおもしろい、とか思って
ちょっと侮っていた)、
人々の営みがとてもリアルで匂い立つような生活感があって、
素直に凄いな、と思いました。

人種の違い、男女の違い、世代の違い、単なる価値観の違い。
いろんなレベル感で人間というものが描かれているけれど、
説教くささも綺麗事もない。
むしろ、自分で考えろと言わんばかりのカラッとした文章で
とても好感が持てる。
素晴らしい作品だった。

アメリカでは「パチンコ」というジャンルそのものが新鮮らしいので
原題に文句のつけようもないけれど、
やっぱり、邦題では変えても良かったのではと思ってしまった。
訳者の池田さんもパチンコという単語のイメージで
読むのが後回しになっていたみたいなので、
単語が持つ意味の「外側」とか「空気感」みたいなものを踏まえると、
勿体無い気がするんだよなあ(しつこい)。

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