某年金生活者のぼやき

まだまだお迎えが来そうに無い

好きな短歌、俳句

2012-04-17 01:52:05 | ぼやき
 たまに朝日新聞の俳壇歌壇を読む。すると、前に書いた「請戸川何も知らずに鮭遡る」のように、福島の原発事故や震災につながるものがすぐ目に入る。今朝の新聞にも何首かあった。「なほ避難われを悲しむ山桜」(横浜市)「原発に耕土失う春の惨(ざん)」(厚木市)「桃畑にほほえみて話す信夫野の人らの声に涙交じりき」(福島市)「『おれたちはただのマウスよ』南相馬の放射能浴びし若きら叫ぶ」(平塚市)「瓦礫からふと海に目を転ずれば青海苔をはむ黒雁の群れ」(仙台市)
 括弧に入れた居住地からの投稿だが、そこまで避難してきた人々もいようし、また、ボランティア活動で体験してきたことを歌にした人もいることだろう。無残、無念の思いが吹き出している。
 先月末の良く晴れた宵に金星、月、木星が空でたてに並んだ。「天体のショウよ、大山の方の空を見なさい」と電話で知らせてくれた方がいて、私もうっとりと眺めた。歌心のある人は早速それを短歌にしている。「木星(ジュピター)をみおろし月を随身に君臨するは宵の明星(ヴィーナス)」(男性)「金星に吊られし月が木星を吊下げている春宵一刻」(女性)。男性は星の並び方に階級制を読み取り、女性はもっと人間的に関係をみている。しかし、どちらも女性上位を歌っているところが面白い。男性は少し悔しそうだが。
 高校生の素直な歌もある。「黒板の文字をノートに写すとき見えないふりして君のを借りる」(高一男子)「春休み手袋優しく洗います学校用とお出かけ用と」(高校女子)。いいねぇ。俺にはこんなの無かったな。昔は中・高・大ともに女子生徒がいなかったからなぁ。
 中学以来の友人安部冨士男は幼稚園の園長さんだが、優れた俳人でもある。彼のことはいずれ書くが、此処には彼の句を二つだけ記しておきたい。先日の同期会で頂いた冊子にあった句だ。
 「冬の蝶ぼろぼろの影曳き歩む」これには彼の若き頃の悲惨としか言いようのない苦労の連続が歌いこまれているように私には思える。「阿武隈の尾根澄みゆくや夏の果」これは大きい。景色が目に浮かぶ。きれいだ。同じ土地に育ったものとしては、「そうだ、その通り」と喝采したいところだ。
コメント
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