Our World Time

チャオプラヤ河のほとり

2008年02月23日 | Weblog



▼いま、バンコクを流れる大河チャオプラヤに昇る朝陽をみています。
 河岸に頭を覗かせたと思うと、みるみる高く大きくなり、濁った河面(かわも)に金色に照っています。

 2月14日に、ここタイに入り、タイを拠点にカンボジアやラオスに出て、またタイに戻ってきました。

 いちばん胸に刻みつけられたのは、忘れられた国になってしまっているラオスの農村で会った少年少女です。
 少年たちは、鼻水を手でぬぐいながらも、きりっと精悍な眼で家と村のために働き、少女たちは、服はきれいじゃない、いやありのままに言えば垢だらけでも、見とれるぐらいに自然に美しく、きびきびと働きます。
 訪れた小学校では、先生がいない教室でも、みな一心不乱にラオス語の書き取りをしています。

 あぁ、日本もこんな若い国に戻りたいなぁ。
 農家のあいだを縫う、埃(ほこり)っぽくて狭い道を辿りながら、思わずそう声に出ました。


▼日本では、イージス艦が漁船と衝突する重大な事故が起きました。
 フジテレビの報道番組から生放送への番組参加( 出演 )の打診があったけど、それに間に合うような帰国便が満席でとれず、応えられなかった。

 旧知の海上自衛隊佐官や海上保安庁幹部らと、電話や電子メールで連絡を取りあっている限りでは、イージス艦に、実はとても単純な、それだけに信じられないような落ち度があったことは、ほぼ確実なようです。

 海自の艦船に乗るときに、ふと感じることのある不安、たとえばアメリカ海軍の艦船に乗るときとは微妙に違う、かすかな緩さ。
 その不安が現実になった気がしています。
 日本の海軍力は、敗戦後に MARITIME SELF DEFENSE FORCE という国際的にはまったく意味不明の名を与えられました。

 それでも、諸国の海軍と比べて将兵のモラルは低くない、いや高い。技術も高い。
 だけれども、海軍ならざる海軍力という不可思議さ、奇妙な感覚が、ほんとうは組織のすみずみに染みわたっていて、それが、あのかすかな緩さにつながっているように思います。


▼今週の水曜日2月20日に放送された関西テレビの報道番組「ANCHOR」(アンカー)の『青山のニュースDEズバリ』コーナーは、ぼく自身はまだ見ていません。

 ぼくがこうして海外にいますから、事前に洞爺湖で収録したロケがVTRで放送されたのですが、ロケがどのように編集されるか、事前にはまったく知らないのです。
 これは今回のロケに限りません。
 ロケがあれば、その現場で一生懸命にやるけれども、そのあとの編集については原則としてテレビ局のディレクターの編集権に口出ししません。

 大阪の主婦の「ぼやきくっくり」さんが、いつも完璧な番組起こし、内容のテキスト化を行ってくださっているので、今回も、それを読んで、放送の様子を知りました。

 生放送の、その場にいないと、好きなことを言われてるナァ。
 キャスターのヤマヒロさんが「青山さんの足の骨折を考えて、スキーはしないようにスタッフは止めたんですよ」という趣旨を話してるけど、ええー、こりゃ違うわい。
 ま、こんなことは事実と違っても、いいんですけどね。

 ディレクターから独研(独立総合研究所)の秘書室長に「サミット会場になる洞爺湖のホテルには、小さいけれどスキー場も付いています。滑りますか」という打診があって初めて、そもそも、スキー場がロケ地にあることを知ったのです。

 秘書室長から電話でそれを聞いて、「うん、滑る」とは即、答えました。
 スキーは学生時代に打ち込んで、やっぱり世界でいちばん好きなスポーツだし、番組にもプラスになるかなぁと思ったから、即座にOKしました。

 でもね、止められたのに無理に滑ったというのとは、正反対ですね、こりゃ。

 この「ぼやきくっくり」さんの起こしてくれたテキストを読んで初めて、「青山さん、いい格好をみせようと無理をして、スタッフが止めるのを押し切ってスキーしたりしないでくださいね」という趣旨のメールを、視聴者のかたからいただいた理由が分かりました。

 スキーを13年間、1度も滑っていなくて、練習ゼロでいきなり滑るのだから、いい格好なんてできにゃい。
 見る人が見れば、滑りの欠点、身体が後ろに残り気味だったり、ストックが短くてちゃんと突けていなかったり、カッコわるいところが分かります。

 番組のなかでスキーをしたのは、ひとりでも多くの視聴者に番組をみてほしいからです。
 あのコーナーは、ぼくが生放送の現場にいなくてロケのVTRだけで放送すると、ふだんより見てくださるかたが、かなり減るんです。

 ちょっとでも興味を持ってもらえるかなぁと、カッコわるい滑りになるのを承知で滑ったので、メールをいただいて意味が分からず、なんだろうなぁと首をひねっていて、テキスト起こしで、あぁなるほど、と分かりました。

 …と、書いてきたけど、もちろん、まぁいいんです。
 ぼくがスキーを滑ろうとどうしようと、それは、どうでもよくて、あのロケでは何より北方領土のことを伝えたかった。
 その部分は、テキスト起こしによると、ちゃんと放送されていたようですから、嬉しく思いました。

 ロケは実際は、ほぼ1日中ずっとカメラを回して、いろんなことを山のように話し、それをわずか十数分に編集するわけです。
 テキスト起こしをみると、「遊びに行ったんじゃないの?」というコメントも言われちゃってるようだけど、ほんとは、スタッフもぼくも、てーへん、大変です。
 もちろん、このコメントも冗談ですよ。ロケがしんどいのは、実際はよくご存じだと思うから。

 ヤマヒロさんも、コメンテーター陣も、明るく軽いジョークで言っているのです。
 ぼくは、だからOKなんだけど、いくらか意外なメールもいただくので、ちょっと書いておきました。
 もっとも、そのメールもジョーク混じりです。


▼さて、朝陽はもう昇りすぎて?雲のあいだに隠れちゃいました。
 ぼくも…どちらかというと隠れたい。

 隠れて、書きたい原稿だけを書いていたい。
 もの書きは、ものを書き上げた瞬間に、それは自分のものでなくなって、読者のものになり、どのように解釈されても、もはやその解釈には書き手は踏み込まない。

 それが、ぼくにはいちばん生きやすい。
 ぼくはほんとうは、子供のころから、人の目に立つのが嫌いです。
 見知らぬ人のあいだに紛れているのが好きです。

 少年のころにロックバンドに熱中したときも、前に出てくるヴォーカリストよりも、うしろで気楽?に演奏しているメンバーが、いい感じ、たのしい役割に思えました。

 日曜の深夜にバンコクを発ち、月曜の朝には日本に戻っています。



※写真は、チャオプラヤ河です。
 朝陽が隠れてしまったあたりの雲が、深い光をはらんでいます。