Our World Time

深く 淡く 生きる   (その2)

2006年12月01日 | Weblog



▼みなさん、べつに神出鬼没を気どるのじゃないけど、きょうはパリにいます。

 北朝鮮をどうするか、そのことをめぐってヨーロッパのある国に水面下深くの動きがあるらしいことを知り、直接に当事者に確かめるという、ぼくなりの方法論にしたがって、ここヨーロッパに入りました。

 晩秋のパリは、おおきな落ち葉が舗道に落ちるなか、クリスマスの飾りつけが始まったばかりです。
 11月30日の朝、6時45分に自宅を出て、現地時刻の午後5時半ごろだったかなぁ、パリのホテルに入りました。

 といっても休む間もなく、ホテルをあとにしてオペラ座の近くで、ある高官と会い、お魚料理を食べながら、北朝鮮のこと、フランスの大統領選挙のこと、日本の核武装論議のこと、靖国参拝のこと、安倍政権のこれからのこと、そしてやっぱり北朝鮮のことを議論して、情報を交換して、深夜まで話しつづけました。

 ホテルに帰ると、たくさんの連絡事項をこなしてから、45分だけ仮眠して、独立総合研究所から配信している会員制レポート「東京コンフィデンシャル・レポート」第301号の仕上げにかかり、完成して、会員への配信が終わったのは、パリ時間の朝8時半をすぎていました。

 自宅の近くから成田空港へ向かう、揺れるバスの中、空港ラウンジでの待ち時間、そして12時間ほどの機中と、ずっと、このレポートを書き続けたあとに、仕上げのための徹夜でしたから、さすがに疲れが深いし、いくらか腰も痛いなぁ。

 だけども、会員になってくれている法人、個人のみなさんに、ほんとうにこころ深く感謝しているので、こうやって仕上げに手間ひまをかけたレポートをお送りできるのは、凄く、ほんとうに、うれしい。
 レポートが配信できていないと、ぞれがずっと頭に引っかかって苦しい。
 会費を払ってくださった会員は、当然、今かな明日かなと毎日、待たれると思うから。
 だから、きょうのように無事、配信できると、たいへんにホッとする。
 うれしいな。

 それにしても、このレポートも300号を超えました。
 まずは500号を早く達成できる、つまりは会員にしっかりと沢山、届く。そのようにしたいです。


▼さぁ、これから、せめてお風呂に入って、体をしゃっきりさせてから、ちょっとは散歩でもしたいな。

 パリのようすをハンディなムービーカメラで撮って、関西テレビの報道番組『ANCHOR』の、ささやかな小コーナー『青山のニュースDEズバリ!』で、みなさんにお見せしようとも思っているのです。

 そのためには、こうやってホテルの部屋に籠もりっぱなしじゃ、どうにもならないですからね。


▼まえに『深く淡く生きる その1』と題した書き込みをアップしました。
 ぼくの日常を、すこし淡々と、ありのままに記してみたいと思ったのです。

 きょうは、その2回目をアップします。
 すこしづつ、すこしづつ、日を遡って記憶をたどり、アップします。
 その書き込みは、「ですます調」じゃなくて、ふつうの文章で書いていきます。



※きょうの写真は、珍しくぼく以外のかたが撮影された写真です。
 11月24日に、伝統ある「安全保障研究センター」(民主党の旧民社党系・議員が中心の勉強会)で講演しました。
 そのとき、江田五月さん(元科学技術庁長官)の秘書のかたが撮ってくれたのでしょう。
 江田さんのホームページにアップされているのを、お借りしました。(当然ながら、版権その他は江田さんにあります)

 講演は、朝でした。
 ぼくが、まだけっこう若手の記者だった時代に取材していた議員が、国会のさなかに、たくさん集まってくれて、内心で「へぇー」と思い、実はちょっとアガりました。
 江田さん、中野寛成さん(前衆院副議長)、玉置一弥さん(前代議士)、高木義明さん(民主党国対委員長)、中井洽さん(元法相)、柳田稔さん(参院議員)などなど、みな政治記者のときに、未熟な記者だったぼくに親しく付きあってくれた人ばかりです。
 じっと耳を傾けられ、そのあとは積極的に質問してくださいました。

 中野さんたちは、「この会は、まぁ民主党右派の集まりでね。党の安全保障政策にすこし疑問を感じることも多いけど、このごろは安全保障に関して、あまりに錯綜してたくさんの重大事が起きる。それをいっぺん、整理して考えるには、青山さんに聞くのがいいと、そう考えてね、お呼びしたんですよ」とおっしゃった。

 ありがとうございました。ぼくは、恥ずかしかったです。


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(深く淡く生きる  その2)

▼2006年、平成18年10月16日 月曜

 夜7時から、英国大使館で、独研(独立総合研究所)と信頼関係のあるリード書記官の送別レセプションに出席。
 英国大使館はいつ来ても、たたずまいが、深い。
 なんて言うのか、精神性がある。

 イギリスに留学していた専門研究員のMが同行。
 独研に来てまだ日が浅い彼女だけど、元気よく沢山のひとと、自然な英語で会話を楽しんでいて、うれしく思う。

 旧知のイギリス海軍大佐と、1週間まえに核実験をおこなった北朝鮮に対する臨検の話をしているとき、思慮深い彼が、「青山さん、日本は敗戦のあと、アメリカに言われるまま、海の安全保障を、海上自衛隊と海上保安庁に分けているでしょう。こりゃ、良くないな。わが国のように、海の護りは海軍が一元的にやるべきです」と言う。

 うーむ、これはちょっと正直、虚を突かれたなぁ。
 考えてみるに値する言葉だなと、印象に残った。
 いつか、海上保安庁の信頼するひとに意見を聴いてみようと、思った。


▼10月17日 火曜

 午後いちばんに、独研の本社で、新しく顧問になってくれた年上の、信頼しているかたと、独研の役割を、もうすこし広く理解してもらうための改善策について協議。
 こころから頼もしく思った。

 午後の便で、羽田を発ち、大阪へ。
 夕刻から、公共事業体の幹部ふたり、そして女性の中堅幹部と会食。
 独研からも複数の人が出て、同席。
 テロ対策から人事の話まで、会話は弾んだ。

 ぼくはこのごろ、人と会うのを、すこしだけ避けたいなと思うことが、たまに、ある。
 人と会い続けるのが使命の記者出身で、それに、子どもの頃から人なつこいほうだったのに、こりゃ、何だろう、よっぽど疲れているのかな。
 だけども、今夜は、さほど疲れを感じず、ゆったりと会話を愉しんだ。
 この公共事業体とは、記者時代から20年ほども変わらず、おつきあいしている。

 いったん、つきあったなら、長い。それは確かに、そうなんです。

 夜遅くなってから、関西テレビに入り、あす生放送の報道番組『ANCHOR』の『青山のニュースDEズバリ!』コーナーのための打ち合わせ。
 この打ち合わせは、正直、たいへんだ。
 何をテーマに放送するか、そのテーマだったら焦点をどこに絞るか。
 そうしたことについて、ぼくから毎回、提案し、番組スタッフが自由に意見を言い、ときにバトルになる。
 議論が4時間を超えたときもある。

 東京でかなり疲弊して大阪に入り、あるいは北海道から沖縄まで、地方で非力な力を出し切って仕事をしてから大阪に入り、こうやって、すでに遅い時間から、この打ち合わせを始めて、日付が代わり未明になることも珍しくはない。
 そりゃ、正直、つらい。

 だけども、スタッフの熱意、それから視聴者のことを、ぼくなりに懸命に考えて、毎回欠かさずベストは尽くしている。


▼10月18日 水曜

 朝7時15分ごろから、定宿の大阪市内のホテルで電話の受話器を握り、福岡のRKB毎日放送のラジオ番組『スタミナラジオ』の『ニュースの見方 目からウロコ』コーナーに生出演。
地元の人気キャスターの中西さんの問いかけに、視聴者の問いかけが込められている感じがある。
 つたないなりに、それに応えるつもりで話す。

 正午ごろ、ホテルの部屋に関テレのディレクターから、いつものように、きょうの番組内容について確認の電話。
 ちょっと前にメールで送られてきた進行台本をみながら、打ち合わせる。
 進行台本は、ゆうべの長時間の議論を踏まえてつくられている。
 プロのスタッフが、じっくりと練って書いてくれている。
 きちんと努力して、工夫を凝らして、話題を整理し、進行台本に仕上げてくれているのが、よく伝わる。

 それでも、ぼくの思いとはまだズレがあることも珍しくはない。
 電話にかじりつくように、じぶんの声を励まして、議論をする。

 ゆうべの打ち合わせが終わって、未明にホテルへ帰ってきて、それで眠るのじゃない。
 ほとんど朝まで、原稿の執筆と情報の収集。
 だから、この昼の電話が終わると、心身がぐったり疲れているのを、当たり前だけどね、感じる。
 電話のあと、その電話の中身を受けて、みずからの情報をもう一度、客観的な眼で確認する。関テレへの出発時刻が迫ってくる。

 このまま『ANCHOR』に出ると、心配した視聴者からメールをいただくことになるので、必ず、ホテルのプールに行き、10分か15分だけブレストとフリーを泳ぐ。
 泳ぎながら、なんと寝ていたりするけど(実話です。しょっちゅうです)、それでも体の細胞を生き返らせる効果は、いくらか、ある。

 ただ、ずっと以前だったら、こうやって泳ぐと、全身の細胞が生き生きと呼吸するのが、ありあり分かった。
 このごろは、そこまでいかない。
 プールの水で、おのれの心身を励ますのも、もはや限界かな。
 それに以前は1時間近くも、たっぷり泳いでいた。どうにかして、その時間をつくった。
 いまは10分とか15分だもんなぁ、躯も生き返るヒマがないや。
 
 水のなかには生と、死がある。
 生命は、水のなかから生まれたから。
 水に差し込む光を、スイム・ゴーグル越しにみながら、死のときまでは、こうやって、ごくささやかに命の力を最期の一滴まで、ただ尽くせば、それでよいと、思い直す。

 プールから出て、髪を洗ってヒゲを剃り、関テレ入り。
 メインキャスターのヤマヒロさん(大阪一の人気を誇る男性アナ)、村西利恵ちゃん(清楚な女子アナ)、それから番組でぼくの隣にいらっしゃる直感鋭い作家の室井祐月さんらと、全体の打ち合わせを終え、生放送の5分ほど前に、報道スタジオに入る。
 報道スタジオの緊張感は、好きだ。

 午後4時55分、生放送、開始。
『青山のニュースDEズバリ!』は、かなりの視聴者にみていただいているけど、じぶんで満足できた仕上がりになったことは、ただの一回もない。
 いつもいつも、本音で、本心から、あとで悩む。
 もっと分かりやすく、問題の根っこを伝えたいのに、いつも後悔が残る。
 あ、あ、あぁーと、内心で、ひとり叫ぶ。
 おのれの愚かさを、ほんきで呪う。
 せっかく視てくれた視聴者にちゃんと伝わっていないだろうと、胸のうちで、身悶えしてしまう。

 だいたい、テレビ番組と講演は、いつも終わってから、苦しい、哀しい。
 じぶんが、あまりに下手くそだから。

 おのれの仕事のうち、あとで「これはプロの仕事だね」と、ささやかなりに満足できるのは、文章を書く仕事だけ。
 しかし、それも何年か過ぎて、たまたま読み返したりすると、じぶんの非力に不満が爆発して、本を思わず、バシッと閉じてしまうことがある。
 なぜこうまで未熟なのか。

 伊丹から夜を飛び、羽田を経て、もう深夜の時間帯に自宅へ戻る。
 生放送の自分の下手くそぶりを責めているので、きっと眠ったら悪夢かなんか見る。
 ただね、幸か不幸か、原稿書きで眠る時間がない。
 ははは。
 ふひ。


(その3に続く)