大槻ケンヂはマジックマッシュルームとUFOの夢を見るか その2

2015年01月26日 | 音楽
 前回(→こちら)の続き。
 
 マジックマッシュルームバッドトリップと、日頃のストレスが重なって、心の病を発症してしまったロックミュージシャン大槻ケンヂさん。
 
 
 「自分は大病を患っていてもうすぐ死ぬのだ」
 
 
 という脅迫的妄想に襲われていたオーケンは心療内科にせっせと通うようになるのだが、そのときの先生とのやりとりが、こんな感じ。
 
 
 「先生、僕はきっとエボラ出血熱です!」
 
 「大槻さん、それだったらすでに死んでますよ」
 
 
 コントやん!
 
 いや、本人は大マジメの恐怖をうったえるのだが、端から見ると、これがなかなかズッコケなのである。
 
 そらそうだ。心はともかく健康体なうえ、バリバリの売れっ子ミュージシャンが、突然「不治の病」宣言したら、「またまた」と笑われることだろう。
 
 オーケンほどではないけど、私も心身の調子をくずしたときに似たような経験をしたから、氏の苦悩は少しはわかるつもりだ。
 
 こっちは死ぬ思いで相談してるのに、目に見えるケガ数値に出る病気じゃないから、むこうは全然ピンとこない
 
 なもんで、理解されないどころか、下手すると怒られたりイジられたりするんスよねえ。
 
 実際、治ったあと振り返ると、自分でも「あー、あのときはおかしかったなあ」と苦笑いするくらいだから、それをわかれというのも難しいんですけどね。
 
 でも、そのときは必死も必死。まこと「悲劇喜劇裏表」なのだ。
 
 仕事に没頭したりを鍛えてみたりと、治療のためさまざまに試み、せっせとを飲み、心の平安を保とうとするオーケン。
 
 そんなる日、医者の先生が、こんなことをおっしゃった。
 
 
 「大槻さん、テレビ見ましたよ」
 
 
 続けて言うには、
 
 
 「大槻さん、UFOはいけません!」
 
 
 先生曰く、
 
 
 「が弱った人がオカルト的なものに興味を持つと、激しく傾倒してしまう傾向がある」
 
 
 たしかに、当時のというか、オーケンはUFOやらオカルトやら、そういった『月刊ムー』的な物件は大好物で、よくエッセイのネタにもしている。
 
 といっても、本当の意味でというか、宗教的に「ハマッて」いたわけではなく、どちらかといえば
 
 
 「グレイって、あれヒル夫妻が『あれは実は作り話で、著作権がうんぬん』とか言い出したら通るんですかね」
 
 
 とかいった「と学会」的ノリのマニアなのだが、先生は
 
 
 「ダメです。今後一切、オカルトとUFOを禁じます!」
 
 
 これはつらい。いうなれば、アイドルファン
 
 
 「握手会やライブに出入り禁止。曲を聞いたり、テレビやネットで姿を観るのもダメ」
 
 
 といってるようなもんだ。
 
 お笑いファン劇場出禁とか、ボディービルダージム通い禁止とか、そんなの、耐えられないよー。
 
 とはいえ、治療のためには言うことをきかなければいけないわけで、オーケンはストイックな「禁欲生活」(?)に突入。一切のオカルトを絶つことに。
 
 そのせいではないだろうけど、数年たって、かなり心身がになってきた。
 
 心の平安を、一部とはいえ取り戻したオーケンは、そこでこう思うのだった。
 
 
 「あー、変な本読みてーなー」
 
 
 そこで思い切って切り出してみることには、
 
 
 「先生、オカルトとUFOを解禁してくれませんか?」
 
 
 どんな解禁要請なのか。闘病明けで、煙草ならわかるが、
 
 
 「調子がよくなったので、モスマンリンダナポリターノ事件にゴーサインを」
 
 
 というのは、世界広しといえどもオーケンだけだろう。なんてステキなんだ。
 
 ただ残念なことに、職務熱心な先生は、そこをゆるしてくれない。
 
 むしろ、「なにいってるんですか! ぶり返してもいいんですか!」と怒られる始末。
 
 そこから議論は
 
 
 「お願いしますよ」
 
 「ダメです」
 
 「なぜですか」
 
 「大槻さんは、はまりこむ人だから」
 
 
 そんな堂々めぐりの中オーケンは
 
 
 「じゃあオカルトはいいいです。UFOだけ解禁してくれませんか?」
 
 
 あまりの熱意というか、しつこさにまいったのか先生は、
 
 
 「そうですか、そこまでいいますか」
 
 
 これによりUFOに関しては解禁。「ヤッホー!」と快哉をあげるオーケンに先生は、
 
 
 「まあ、あれですよね、UFOには夢がありますからね」
 
 
 UFOにはがある。ホンマかいな。
 
 まあ、そういわれたら、そんなような気もするようなしないような、やっぱりしないような。
 
 ただ、「UFOには夢がある」というフレーズは秀逸である。
 
 その前向きなのか、あやしいのかわからない方向性が、迷走感たっぷりでナイスだ。
 
 かくのごとく、UFOには夢があるらしい。医者の先生のお墨付きだ。
 
 君たちには夢があるか。
 
 混迷の世に光を見失っている若者たちの、一助になれば幸いである。
 
 
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大槻ケンヂはマジックマッシ... | トップ | 高橋秀実『弱くても勝てます... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。