ベッキー騒動を見て、私も謝罪したくなりました その2

2016年02月09日 | 時事ネタ

 前回(→こちら)の続き。

 ベッキーさんの不倫報道を見て「私も彼に謝罪したい」と思うようになったのは、昔遊んだプレステのゲームから。

 世界を滅ぼす悪のボスと対峙した主人公とヒロイン。

 かつて親友だった男が、なぜこんな恐ろしいことをするのかと問うならばその答えというのが、

 「それは、わたしがそこにいる女を愛していたのに、彼女がキサマを選んでしまったからだ! こんな世界など生きる価値はない。だから滅ぼしてやるのだ!」

 これを聞いたときの私の反応はといえば、ダウンタウンの松ちゃんのごとく「ええええええええ!」であった。

 世界の危機。そんな恐ろしいことに彼を向かわせた動機というのが、

 「好きな女をよそに取られた」

 これなのである。

 これには心底驚愕した。私はミステリファンなので、多少はサプライズエンディングにはなれていたつもりだったが、それにしても驚きました。

 まさに、『アクロイド殺し』も『Xの悲劇』もかなわない、強烈すぎる、ある意味見事な「最後の一撃」。

 いやもうですね、コントローラーを手にしながら思わず声に出して、

 「頼むから、そんなことくらいで世界滅ぼさんとって……

 そう、しみじみとつっこんでしまいましたね。
 
 女にフラれたから世界を滅ぼす。

 そんなんでいいのか、ハードな設定のゲームよ。

 そりゃ、気持ちはわからんでもない。私だって人並みに女性にフラれた経験もあるし、なんだったら好きだった女の子が知ってる男とつきあいだして、会うたびにジェラシー爆発だったりとかもありました。それなりに、愛が成就しない気持ちは共感できるつもりだ。

 にしてもだ、やはり「だから世界を滅ぼ」したらいかんだろう。ええ大人のすることやないよ、それは。

 このボスキャラは、それを告白したとたん、

 「うわー、オレって超カッコ悪い! ダッサダサやあ!」

 なんて、頭をかかえそうにならなかったのだろうか。

 そんな、ある意味「根性のある太宰治」みたいなストーリーを見せられて、

 「ようこんなシナリオ書くなあ。愛やいうたら、なんでも通ると思ってからに。リアリティーなさすぎて、全然、感情移入できへんわあ」

 なんてあきれていたわけだが、続けて遊んだ『ファイアーエムブレム 紋章の謎』でも、最初は頼れる味方であったはずの「草原の狼」ことハーディン隊長がアカネイア神聖帝国を率いて世界を滅ぼそうとする理由というのが、

 「妻となったニーナ姫が、かつての敵である黒騎士カミュに想いを寄せているから」

 2作続けて同じオチだったのにはコケそうになりました。

 ハーディンといえば「暗黒皇帝」を名乗り、主人公マルスを何度も絶体絶命の危機に追い詰めるおそろしい敵だが、その内実が、

 「嫁が元カレのことばっか考えて、オレにふりむいてくれへん!」

 では、こっちも腰砕けなことはなはだしい。

 いくら無敵の武器である王家の槍「グラディウス」で攻撃されたところで、ダメージとか以前に、

 「あんたの嫁のグチとか、知らんがな」

 と言いそうになる。痴話げんかに、世界を巻き込むなよと。

 まあ、これは世界終わりかけてるのに、空気も読めず、相変わらず昔の男にポーッとなっとるニーナ様も問題あるけどさ。

 あと、そういや『伝説巨人イデオン』もそんな話だったっけとか、あれこれ思い出しもするんだけど、ともかくも私はどうにもこの、

 「恋愛が理由で世界をどうにかしようとするヤツ」

 というのが理解不能だったのだ。

 いやいや、気持ちはわからんでもないけど、そんなことで世界を滅ぼさんとってと。フラれて悲しいなら、中島みゆき聴いて泣くとか、ほかにやりようあるやん!

 なんてつっこんでいたものだが、今回のベッキーさん事件を見て、20年ぶりにその考えが少しくつがえされることとなったのだ。

 いや、人は恋愛感情が絡むと、こんなにもうまく立ち回れなくなるんだと。そら、恋して舞い上がってて、しかもそれなりの力を持ってたら、世界くらい滅ぼすかもなあと。

 ベッキーさんの事件は、モラルとかそういったところはとりあえず置いて見ると、驚かされるのがその損失額である。

 CM打ち切りの違約金が4億とか報道されてたけど、もしこの騒動がなくてふつうに仕事をしていたらどれだけ稼いでいたかということも計算に入れると、ちょっとのけぞるような額になるのでは。

 「生涯賃金」でいえば、たったひとつの恋愛のために、あまりにも多くのものを犠牲にしてしまったことになる(まあ、すぐに復帰はするんでしょうけど)。

 もちろん、こうして世間に最悪な形でさらされることは計算に入れていなかったであろうけど、それでもバレたときのリスクを考えたら、とても「聡明でやり手」なイメージのベッキーさんらしからぬ選択である。

 タレントとしてのイメージを考えれば、ほかにやりようはいくらでもあったはずだ。

 その意味でいうと、その可能性をどれだけ危機に感じていたかは別にして、それこそ何億単位のお金と自分のキャリアを棒に振ってしまうリスクを背負ったうえで、一時の激情で足をすべらすというのは……。

 もう、理屈やないんですね、きっと。

 なるほど「嫁に嫉妬して世界滅亡」「恋する黒騎士のためなら、王国くらい失ってもOK」くらいの勢いというのも、あながち大げさな話でもないのかもしれぬ。

 特に恋愛になれてない人にとっては、相当にリアルな発想なのだろう。

 かつて中島らもさんは、

 「恋は病気の一種だ。治療法はない。ただしそれは世界で一番美しい病気だ」

 と書いたが、きっとそういうことなんだろう。

 だとしたら、ベッキーさん同様に恋でわけがわからなくなったハーディン皇帝のことも、決しておかしなことではない。

 結果的には億の金と自分のキャリアを失う恋をした女性もいるのだ、そら大帝国のドンが恋したら、それくらいスケールの大きいしくじりくらいするよね。

 というわけで、とりあえずここに謝罪したい。

 うん、そら愛し合ってるときとかに彼女が遠い目で元カレのこと思い出してたりしたらつらいですよ。

 抱こうとしたら、泣かれたりしたんでしょうしねえ……。

 あのときはdisってすいません。

 でもやっぱり、さすがに世界は滅ぼさないでほしいですけど。

 そこは男の子なんやからグッと気持ちを押さえて、なんとか「世間体の悪いLINEで炎上」くらいで手を打っていただけないでしょうか、暗黒皇帝。



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