前回(→こちら)の続き。
悪の宇宙人ガロガが送りこんできた恐獣ガンダーギラス相手に、苦戦を強いられる正義のヒーロー、ゾーンファイター。
敵がPS73という恐ろしい爆薬を飲みこんでいるため、うかつに衝撃を与えると大惨事になってしまうからだが、地球の運命をかけたジャンケンゲームに続いてファイターが提案したのが、なぜか
「輪投げの3回戦勝負」。
協力して競技用の輪を作り、山をこしらえて棒をたてるヒーローと怪獣。まずは先攻がガンダーギラスで、1、2の3!
と投げた輪は、見事に目標の棒をとらえてワンポイント。
ガンダーギラス、あざやかな先制である。
続けてゾーンファイターの番。
大まじめに輪を投げるゾーンファイター
1、2の3でポーンと投げると、おしくもはずれ。
これで1ー0。ガンダーギラスのリードである。
まあ、こういうこともあろう。ヒーローがあっさり勝ってしまっては、ドラマに盛り上がりが生まれない。
まずは相手に勝たしておいて、ピンチを演出してから大逆転でカタルシスを感じる。これが物語の基本である。
で、第2回戦はといえば、これがガンダーギラスがまたも輪を入れて2ポイント目、ゾーンファイターははずしてしまう。
これで2ー0とガンダーギラスがリーチをかける。ゾーンファイター後がないぞ! 地球が大ピンチだ!
……て、おまえ不器用か!
ケダモノ相手に手先の器用さで負けてどうする! というか、おまえ正義のヒーローなんやから、超能力くらい使えへんのか!
というか、無くてもはずすなよ! 輪投げくらい。
ここで死ぬほど笑いまくりである。皆の反応を見ると、男子はちょいちょい笑ってくれているが、女子の方は静かなままだ。
きっと、このスリリングな展開に息をのんでいるに違いない。
剣が峰でむかえた第3戦。ガンダーギラスが勝負を決めるか、それともファイターがねばりを見せるか。
ここは勝利を意識したか、ガンダーギラスははずしてしまう。
一方ゾーンファイターはいい投球が決まって、輪は見事に棒に通った!
……ように見えたが、おしいことに輪は棒を通らず、その上の部分に引っかかっている。
そのまま輪が棒を囲むように落ちればOKだが、反対に落ちると外に出てしまいアウトになってしまう。
インかアウトか微妙なところであるが、ガンダーギラスは「勝った、勝った!」と、大喜び。
さもあろう。おしいことはおしいが、輪は棒を通ってない。ガンダーギラスの勝ちに見える。
が、ここはゾーンファイターもゆずらない。
なんといっても、これがアウトなら地球は終わりなのだから、不屈の闘志で食らいつく。勝利を主張するガンダーギラスに、
「待てガンダーギラス。これはノーカウントだ!」
決死の抗議。
私もSF小説や映画で山のように地球滅亡のピンチを見てきたが、
「輪投げがノーカンかどうか」
これですべてが決まるという最終決戦は、はじめてである。
というか、このストーリーにはもうひとつ
「Kスイ星の地球接近」
という大ピンチもあったはずなのだが、みなとっくに忘れているというか、もうそんなことはだれも気にしていない。
こうして、「アウトだ」「いや、ノーカンだ」と不毛なやりとりをするヒーローと怪獣。
なにをやっているのかとあきれるというか、そもそもにして、こんなスットコな提案に渋い顔をしながらも、いちいちつきあってくれるガンダーギラスって、すごいいいヤツじゃん!
ついには、無茶ばかりいうゾーンファイターに業を煮やしたガンダーギラス(いい人)は、ふてくされてプイッと後ろを向いてしまう。
まるで子供であるが、気持ちは大いにわかるところだ。
こうして、いよいよ進退極まったに見えたファイターと視聴者だが、なんとここから話は、まったく予想もしなかったハードな展開になっていくのだから、昭和のドラマはあなどれないのである。
(続く→こちら)